第2次エディージャパン5試合の検証 若手起用も宿題山積み…対戦国の弁から透けた超速ラグビーの課題
やられた日本側は苦戦をどう受け止めたのか
これから日本と対戦するチームの参考書になるような言葉だが、やられた側は、苦戦をどう受け止めたのか。まさに、ケサダHCの裏返しのようなコメントだが、前体制では主将も経験したHO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)は、イタリア相手に速いテンポで戦えなかった要因をこう振り返る。
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「ブレークダウンはプレッシャーがかかっていましたね。ボールキャリアーに対してイタリアはダブルタックルをしてきて、そこで僕らのテンポを出させないというプランだったと思います。僕らの(速いテンポで攻める)プランと相手のプランとの戦いだったが、そこは相手のほうが上だった」
イタリアは日本戦前に過去最高位の世界ランキング8位に浮上している。今冬の6か国対抗でも群を抜くタックル回数をマークしたFLミケーレ・ラマロ主将、フィジカル、機動力両面でクオリティーを見せるLOニッコロとNo8ロレンツォのカンノーネ兄弟、今年の6か国対抗で代表デビューを果たし、日本戦でも高い運動量が光った南アフリカ出身のFLロス・ヴィンセントらハードワーカーがコンタクトエリアに揃い、日本の球出しをスローダウンし続けた。
ゲームを重ねる毎に進化を期待された「超速」だったが、イタリアの重圧で過去4試合よりも機能していなかった印象だ。それまでの試合で見せていたスピード感のある多彩なライン攻撃が見られず、単調なアタックに終始した。エディー体制で初めてSOに入った松田力也(トヨタヴェルブリッツ)は、どんな感触でプレーしていたのだろうか。
「ファーストキャリアーのところで持ち上げられてしまい、ちょっと返されながらプレーしていた状況がすごく多かった。そこはイタリアがしっかり準備したところかなと思います」
松田の言葉を補足すると、イタリアがしっかりと日本の超速対策をしてきたために、アタックを仕掛けた日本選手がホールドされ、押し返されるようなタックルを受けるシーンが多かったということだ。坂手の指摘と共通するのは、イタリアに日本のテンポを寸断されたという現実だ。「返された」ことで前に出れず、日本のアタックに勢いが作れなかった。そのために、先に触れたように、ここまでの試合で見せてきた細やかなBKのムーヴを効果的に使えなかったのだろう。
新生ジャパンの始動からの戦いぶりを見る中で、とりわけイタリア戦ではアタックを仕掛けるときのチームの「戸惑い」を感じた。エディーが唱えるように、「超速」が目指すのは、単なる動作のスピードだけではなく、考え、判断する速さであり、組織として連動する速さ、そして相手に考える判断をさせないほどのテンポでボールを動かすスタイルだ。だが、この日の日本代表のアタックをみても、常時相手を速さで揺さぶるほどのテンポでプレーは出来ていない。SOがボールを持った時には、すでに全員がどの方向に、どんなランコースで攻めるのかが共有されているのが理想だが、どのような攻撃がアタックラインにインプットされているのかが不明瞭なアタックもあった。
ここまでの試合でも同様に、ゲームメーカーが「超速」の戦いを明確にオーガナイズ出来ていないような印象は見られた。これはおそらく組織としての連動性の低さも影響していると思われるが、松田は「超速」の課題をこう指摘する。
「超速ラグビーが難しいというよりも、どこでキャリー(ボールを持って前進)するか、どうやってボール運ぶかというところを考えてやっていますし、もちろん自分の前が開いたらいくという選択もありますけど、もっとボールタッチを増やさないといけないという感覚はあります」
簡単に言い換えれば、パス、ランなどの判断を、状況を読みながら選択することが、このスタイルには重要であり、その判断力やチームでの相互理解などを上げていくためには、実戦でプレー経験を積んでいく必要があるということだろう。コンディション調整などで、イタリア戦以前はノンメンバーだった松田は、1歩離れた位置からチームの仕上がり具合を見つめていた。
「チームが始まって2か月くらいじゃないですか。実際、若い選手も多いし、練習は沢山していても、ゲーム経験というのは、やはり試合に出ないと身に付かないし、すごい必要だと思います。そこは、今回の負けも含めてどんどん良くなると思う。そして、若い選手のエナジーをどうやってコントロールするかが僕たちの勝負ですし、どうゲームをするかもそうです。言葉一つをかけるタイミングも含めて、考えていかないとなとあらためて思います。もちろん代表に選ばれればどんな状況でも頑張るんですけれど、頑張りどころってあると思うので、そこも含めて(司令塔役の)僕が思った通りに動いてもらうためにも、常にコミュニケーションを取り続けたいですね」