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「なでしこジャパン」誕生秘話 発案は1人の女性職員、広がる「○○ジャパン」愛称が世界一の球技大国化に影響【なでしこジャパン20歳の誕生日】

パリ五輪の団体球技全7競技に出場 世界トップの「球技大国」になった日本

 パリ五輪には団体球技全7競技に11の日本代表チームが予選を突破して出場する。全競技に出場するのは開催国フランスを除けば日本だけ。アジアの中で中国や韓国の壁に苦しんでいた日本が、今や世界トップの「球技大国」になったといっていい。

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「なでしこジャパン」以前には考えられなかったが、今はそれぞれに公式な愛称がある。バスケットボール男女は「アカツキジャパン」、ハンドボール男子は「彗星ジャパン」、ホッケー女子は「さくらジャパン」……。

 使われ方に差はあるし、バレーボール男女の「龍神NIPPON」と「火の鳥NIPPON」は今年4月に廃止された。競技間でバラつきはあるものの、競泳の「トビウオジャパン」や、サーフィンの「波乗りジャパン」など、球技以外の代表チームにも広がっている。

 愛称の大きな目的の一つは、代表チームのブランディング。ロゴがデザインされたグッズなどを売り出すマーケティング戦略の一部でもある。とはいえ、普及や強化へ与える効果も小さくはないはずだ。

 強化では一貫性が生まれるように思う。監督名+ジャパンでは、監督が代わるたびにチームが変わる。新監督の最初の仕事が前監督時代の一掃から始まることさえある。ところが、チームの愛称は、それをベースとした一貫したスタイルにつながる。それが、継続的な強化を実現させる。

「なでしこジャパン」には「なでしこらしさ」がある。戦術的には個の力に頼らない組織的なパスサッカー、連係してハードワークする守備、守から攻への素早い切り替え……。最後まであきらめず、フェアにプレーする姿勢も「なでしこらしさ」だ。

 それは「なでしこジャパン」が採用された20年前から、いや女子日本代表が結成された80年代から変わらないもの。長い期間の積み上げが、W杯優勝にもつながった。今や多くの選手や指導者、ファンもが口にする「なでしこらしく」。しっかりしたベースがあるから、大会ごとに成績の浮き沈みがあっても大きく崩れることはない。代表チームの普遍のスタイルは、求心力にもなる。「なでしこ」が子どもたちの夢、目標になる。

 多くの競技に広がった代表チームの愛称だが「なでしこジャパン」ほど市民権を得ているものはない。連想できるものはあっても、多くは「何の競技」といわれそうなレベルだ。しかし、代表の活躍で広く認知されれば、愛称の重みも変わってくる。パリ五輪は「〇〇ジャパン」を広める最大のチャンスでもある。

 20年前、きっかけを作った江川さんは「なでしこの名は公募で、私が決めたものではないけれど、そのきっかけになれたとしたらうれしいです」と話し、代表チームの愛称が成長したことを喜んだ。江川さんは今「なでしこリーグ」初の女性専務理事として、女子サッカー、女子のスポーツのさらなる活性化へ尽力。パリ五輪開幕も楽しみにしている。

【パリ五輪に臨む主な代表チームの愛称】

○バスケットボール男女「アカツキジャパン」
○ラグビー男子「セブンズジャパン」
○ラグビー女子「サクラセブンズ」
○水球男子「ポセイドンジャパン」
○ホッケー女子「さくらジャパン」
○ハンドボール男子「彗星ジャパン」
○陸上 男子リレー「韋駄天スプリンターズ」
    女子リレー「椿スプリンターズ」
○競泳「トビウオジャパン」
○飛び込み「翼ジャパン」
○アーティスティックスイミング「マーメイドジャパン」
○卓球「卓球NIPPON」
○バドミントン「バード・ジャパン」
○サーフィン「波乗りジャパン」

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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