衝撃V5田中希実を慢心させないケニア合宿の衝撃 だから今、思う「限界がわからないから知りたい」
伸びしろを感じさせた取材エリアの言葉「とにかく自分の限界を…」
ケニアはなぜ強いのか。最近では周囲のランナーからケニア情報に興味を持たれる。「飛び込んでみたいという興味を喚起できているのは凄く嬉しい」と歓迎するが、ちょっぴり複雑な感情も。「相反する感情ですが、自分の中の“秘境の地”みたいな部分がいろんな方に知られ始めてちょっと寂しい」。それだけ、第一人者として道を切り拓いてきたということだ。
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日本選手権前まで励んだ合宿中はケニア選手権を生観戦。「まず、どう感じるのか」。東京五輪で1500メートル連覇を果たし、パリ切符も掴んだ世界記録保持者フェイス・キピエゴンの強さに目を奪われた。
「刺激というより衝撃が大きい。まだ自分の中で消化できていません。そういう選手と肩を並べて勝負をしたいと口にするのは簡単だけど、やっぱりまだまだ自分にとって厳しい世界が広がっているのを目の当たりにした。タイムや動画で見るより、生で見たからこそ、実際にこういう走りをする人が生身でいることを実感できたし、だから衝撃だったと思う。見に行ってよかった」
自身はU20世界選手権を目指すジュニア選手たちと練習。「バチバチやるような感覚。自分の眠っていた感覚を取り戻せた」。先輩たちの背中を無我夢中で追いかけた高校時代に似ていた。帰国したら再びたった一人で走る日々。しかし、アフリカで養った“争い”の嗅覚は日本選手権本番で蘇った。
「ケニアで練習してきた分、今日はケニア選手と野生の走りができることを楽しみながら走れた。(オープン参加を含む2人に)揉まれながら走れて凄く幸せなレースだったと思います。
いつもなら外国人選手と走る時に少し焦ってしまったり、怖さが生まれてきてしまうのですが、逆に今回は直近までケニアで練習したり、バチバチのケニア人同士のレースを生で見たりしていたので、今日は抵抗がなかった。ケニアでの経験をここでもできることが凄く楽しみですし、普段ケニアで練習してきたままでいられることが嬉しかったです」
29日に800メートル予選と5000メートル決勝、30日に800メートル決勝が行われる。5000メートルも勝てば3連覇(4度目)&3年連続の2冠だ。「自分の中でピリピリするだけの日本選手権じゃなく、ちゃんと楽しいと思いながら、3種目を走るからこそ得られる感触を改めて感じながら、あと2日間を過ごしたい。チャレンジャーの気持ちでいられる」。1500メートルの内定がさらに田中を強くする。
数十人の報道陣でごった返した取材エリア。最後に残した言葉が伸びしろの大きさを示していた。
「目標をここだと決めるより、とにかく自分の限界を知りたい。限界がわからないから知りたい。そういった走りをパリ五輪でもしたい」
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)