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ラグビーリーグワン初制覇への軌跡と戦略 世界的司令塔を招聘、契約書に書き加え奏功した一文――BL東京GMインタビュー

東芝ブレイブルーパス東京の薫田真広GM【写真:吉田宏】
東芝ブレイブルーパス東京の薫田真広GM【写真:吉田宏】

4チーム争奪戦となったモウンガ獲得の契約条件に書き加えた一文

 優勝ばかりを意識するのではなく、トップ4に入れる強化をリアルに見据える。そんなフォーカスポイントを持ちながら迎えたシーズンだが、薫田GM自身が指摘した4節までの戦いぶりについては、ただ結果を待っていただけではなかった。シーズン序盤戦をしっかりと勝ち抜き、チームを軌道に乗せるために、開幕までの準備に怠りはなかった。伏線になったのは、昨秋のワールドカップ(W杯)フランス大会だった。

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「ご存知のように、今季のリーグワンはW杯の後という特別なシーズンだった。中でも特に、海外のビッグネームの加入という点では、どれだけ彼らをチームに、より早くコミットさせることが出来るかが一番(重要)だなと思っていました。もちろん、そのためには彼らとの契約の内容も重要です。そこで我々にとってかなり大きかったのは、(新加入の)リッチー(モウンガ)、シャノン(フリゼル)が契約書どおり(開幕戦から)入ってきてくれたことでした」

 開幕からの4試合が重要なのは、対戦相手を見れば明らかだった。初戦の静岡BRから、東京SG、神戸S、S東京ベイと、その大半が過去に優勝経験のある、上位に食い込める実力を持つ相手ばかりだった。多くの強豪チームも開幕戦からビッグネームを投入していたが、いきなりの試練となった序盤戦に、ニュージーランド(NZ)代表としてW杯で決勝まで戦ったモウンガ、フリゼルが、フル出場して開幕4連勝を支えた。この4勝でトップ4へ食い込むための視野が開けた。

「実は、チーム内では昨秋のW杯ではニュージーランド代表が勝つだろうと考えていたんです。もし優勝したら、選手はいろいろなイベント、休養なども含めると一か月くらいはウチに合流出来ない可能性が高い。でもこれは、契約段階でしっかりとマネジメントする必要があると考えていたんです」

 世界最高峰の司令塔と呼ばれてきたモウンガに関しては、4チームの争奪戦となっていた。だがBL東京は、“売り手市場”ではなくチーム側の明確な条件を示しながら交渉を続けてきた。

「我々は、W杯が終わって10日以内に来日することを契約条件に書き加えていたんです。優勝を見越してね。そのチームの意図を、エージェントにも理解してもらい、本人たちも了承した上でサインしてくれたのは大きかった」

 世界的なスター選手の仰せの通りの契約ではなく、チームがリーグを勝ち上がるために譲れない条件もしっかり明示した上で、最終合意に漕ぎつけた交渉力の賜物だ。この「10日以内」という契約のおかげで、合流はすこし遅れたものの、2人のレジェンドはシーズンへ向けた準備段階からチームに加わり、開幕戦からの最高のパフォーマンスに繋げた。

「名前は出さないが、他のチームに入団してきたスター選手がシステムに馴染むまでの時間を見ると、圧倒的に違っていたと思います。それがリーグ開幕からのチームのパフォーマンスに繋がった」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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