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57歳・三浦知良の答えに“サッカー人生かけた覚悟” いつもと違った「分かりません」「今を精いっぱい」

サッカーJFLのアトレチコ鈴鹿入りしたFWカズ(三浦知良、57)が、1年半ぶりの日本のピッチでの「ベテランらしくないプレー」を目標に掲げた。鈴鹿は25日、横浜FCからの期限付き移籍を発表。東京・国立競技場で会見したカズは「年齢に関係なく、常にゴールを目指したい」と言い切った。

JFLアトレチコ鈴鹿への移籍が発表されたカズ(左)と7月1日付けで就任する朴康造新監督
JFLアトレチコ鈴鹿への移籍が発表されたカズ(左)と7月1日付けで就任する朴康造新監督

JFLのアトレチコ鈴鹿入り

 サッカーJFLのアトレチコ鈴鹿入りしたFWカズ(三浦知良、57)が、1年半ぶりの日本のピッチでの「ベテランらしくないプレー」を目標に掲げた。鈴鹿は25日、横浜FCからの期限付き移籍を発表。東京・国立競技場で会見したカズは「年齢に関係なく、常にゴールを目指したい」と言い切った。

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 プロ39年目の57歳、選手としてのピークは遠くなった。パワーや持久力、回復力は落ちている。かつて武器にしていたドリブルもスピードやキレが衰え、全盛期のようにはいかない。それでも「かなりの年齢にはなったけれど、年齢関係なくプレーできれば」と笑顔をみせた。

 鈴鹿ポイントゲッターズ(当時)での22年、光ったのは「ベテランらしさ」だった。堅実で正確なプレーでボールをさばき、ハイテンポの蹴り合いに「ため」をつくった。声とプレーで若手を落ち着かせ、流れを引き寄せた。リードして試合を終わらせたい場面など、豊富な「経験」を生かしたプレーは、JFLレベルで貴重な戦力にも見えた。

 22年シーズンでは2点を決めたが、1点はPK。もう1点もゴール前の巧みなポジショニングで奪ったヘディングゴールで、自らの力で相手DFを切り崩したものではない。兄でもある三浦泰年監督(当時)からは「ゴールを決めて」と前線で起用されたが、試合展開によっては1対1の勝負を若手に任せて引いた位置でプレーすることもあった。それが、チームのためだった。

 もっとも、ポルトガルでの経験で考えも変わった。「監督も選手も名前とか年齢とかに忖度なく接してもらえて、精神的に若くいられた」。若手と同じようにハードワークや積極的なプレーが求められた。

「35歳を過ぎたような選手でも、1対1で仕掛けていく。改めて、FWは常に前向きにゴールを目指すことが大事だと思った。練習でのそういうプレーにはモチベーションが上がるし、試合でもやってみたい」。Jリーグや日本代表で勝負し、ゴールし、踊っていたころを思い出すように言った。

 衰えは、誰よりも自分が分かっている。1対1を挑んでも簡単には勝てないし、1人の力でゴールするのも楽ではない。跳ね返される可能性も十分にあるし、ケガのリスクも増す。無謀な挑戦を続ければ、決して多くはないはずの試合出場の機会がさらに減るかもしれない。それでも、FWとして果敢に勝負することを選び「自分で何とかゴールしたい」と言った。

 長く続けるためにプレースタイルを変えるのは自然なこと。年齢とともにポジションを下げる選手も珍しくはない。それでも、カズは「ベテランらしいプレーでチームに貢献したい」という経験を積んだ選手の常套句は口にしなかった。ベテランらしい安定感のあるプレースタイルを放棄し、覚悟を決めて勝負に挑む姿にこそカズの魅力がある。

 30歳以上も年の離れた選手たちと同じ練習メニューをこなし、トレーニングでは常に先頭を走ってきた。戦う体を維持するための食事や睡眠などの節制は年とともに厳しくなる。プロとして努力し続けてきた自負と少しも衰えないサッカーへの情熱があるから、57歳になっても胸を張って「ベテランらしくないプレーをしたい」と言えるのだ。

 Jリーグ4部相当のJFLとはいえ、レベル的にはJリーグの下位と大きな差はない。特に球際の激しさは相当なもの。それでも、カズの勝負への決意は固い。3年後の還暦シーズンを聞かれ「分かりません。実際にできるか分からない。今を精いっぱいやるだけ」。これまでのように「いつまでもやりたい」と流さなかったところにサッカー人生をかけた覚悟がみえた。

 周囲に忖度されて「ベテランらしく」ふるまうのは、楽だし居心地はいい。ただ、それで満足しているだけでは前進も成長もない。サッカーだけでなく、一般社会でも同じ。「ベテラン」というカテゴリーを超越した存在ともいえるカズが、あえて挑む「ベテランらしくない」プレー。たとえ結果がどうであっても、その挑戦は多くのベテラン世代に響くはずだ。(荻島弘一)

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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