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新生ラグビー日本代表、原石たちの検証 エディー流にマッチする「超速」の申し子2人の可能性――山沢拓也&コストリー・インタビュー

BK級のスピードが武器のコストリー、「超速」の申し子に成れるか【写真:吉田宏】
BK級のスピードが武器のコストリー、「超速」の申し子に成れるか【写真:吉田宏】

快足No8コストリーは大学の恩師も「抜群に頭がいい選手」と絶賛する逸材

「いままでの合宿とはちょっと違いますね。いつもテレビで観る選手が周りに沢山いたり、リーチさんのような憧れる選手が一緒に練習をしていて、やっぱり雰囲気が違う」

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 初々しさ溢れるコメントをしたコストリーは、ニュージーランド(NZ)から岡山・環太平洋大に留学して、昨春コベルコ神戸スティーラーズに入団したポテンシャルを秘めた逸材だ。終わったばかりのリーグワンで神戸Sの8番を背負い続け、桜のジャージーにも手を掛けている。日本代表入りの可能性を持つ選手を集めた2月の「男子15人制トレーニングスコッド合宿」に参加すると、5月の同合宿を経て宮崎で初めて「代表」の肩書を掴んだ。2月の合宿でもリーチらと練習をしてきたが、正式な代表としての練習で、さらに学ぶものがあるという。

「初めて代表という環境で練習をしてみて、競争が激しいと感じます。予想はしていたが、やはりちゃんとそうでした。皆が試合に出たいという気持ちを感じるし、プレー以外の部分でも体のケアなども真剣にしている。すごい実績のある選手でも、練習だけじゃなくて それ以外の時でも競争している」

 大学の恩師で、神戸SのOBでもある小村淳監督が「抜群に頭がいい選手」と絶賛するのも頷ける。インタビューしたのは合宿の練習が本格的なメニューになった合宿5日目の夜だったが、新鋭8番はグラウンド内外の代表選手の振る舞いをしっかりと観察して、様々なものを吸収し始めている。大学4年間を日本で暮らしたとはいえ、インタビューも通訳なしで流暢な日本語を使い、時に知らない日本語があるとすぐさまスマートフォンの翻訳アプリを使って調べるなど学ぶ姿勢も旺盛だ。

 賢さと共に持ち味の快足だが、衝撃を起こしたのは昨年12月のリーグワンBL東京戦だった。日本代表でも快足をみせるBL東京WTBジョネ・ナイカブラが、神戸防御を振り切り独走態勢に入ったが、後方から猛加速で追い付きタックルしたのがコストリーだった。種明かしをすると、加速したナイカブラが自ら足を痛めて減速しおかげもあったが、それでも昨秋のW杯でもスピードで魅せたトライゲッターに、身長192cm、体重102kgのNo8が追い付くとは誰もが想像しない出来事だった。

 こちらも種明かしになるが、実は母国ニュージーランドでは16歳までBKだった経歴の持ち主だ。「でも身長が一気に伸びて、このペースで伸びたらLOをするしかないと思ってポジションを変えたら、そこから成長が止まってしまって」という“ラグビーあるある”で高校時代にNo8に定着した。結果的に、このポジション転向が日本でのチャンスを広げたことになる。来日後も、大学3年では一度FBに転向するなど、そのスピードは健在だ。

 そんな快足No8が、代表選手の中でも一目置くのが同じポジションでも活躍するリーチマイケル(BL東京)だ。

「代表に選ばれて、ずっとプレーを続けている。(テストマッチ)84試合に出ているという数字を見るだけで凄いことです。合宿で実際に細かく見てきましたが、私もこうしたら成長できるかなと学ぶ部分が沢山あります」

先に触れた体のケア、コンディショニングなどの自主管理もだが、コストリーが驚かされたのが、リーチがタイトファイブ(FW第1、2列)のグループミーティングにも参加する姿だった。

「私が参加するかと聞かれたら、大丈夫ですと断ると思います。でも、リーチさんは参加してちゃんと話を聞いている。それがすごいと思いましたね」

 前編でも紹介したように、LOでの挑戦も視野に入れるリーチは、練習メニューだけではなく、スクラムでLOがどう組むのか、どう第1列を押せばいいのかを学ぶために、FW前5人のミーティングにも参加していたのだ。

 期待される自分のスピードと「超速」の親和性については自信を見せるコストリーだが、一方で桜のジャージーを掴むための課題も自覚している。

「超速ラグビーの中で、私のスピードを出して、早く立ち上がって次のプレーにいくようなワークレートを見せていかないと、プレーチャンスは無くなってしまう。そして、強いコンタクト、タックルをインターナショナルレベルで出来る事を証明しないといけない。そこを、この合宿で成長しようとしています。証明できればきっとチャンスがあると思います」

 大型FWを擁するイングランド代表は、フィジカルの強さ、タックルでアピールするには最高の相手でもあるが、コストリーにはもう1つのモチベーションがある。

「イーサン・ルーツ(FL、No8)とチャンドラー・カ二ンガムサウス(同)は、NZでの友達です。2人と代表戦でプレーできれば楽しいですね」

 ルーツとカニンガムサウスはニュージーランドで育ち、イングランドのプロクラブでプレーする若手有望選手だ。共に今年の6か国対抗で代表デビューを果たしている。BK出身だったコストリーがNo8に転向したことも含めて、不思議な巡り合わせでFW第3列として相まみえることになれば、コストリーにとっては最高のデビュー戦になる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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