スポーツ王国が支えたBリーグ広島の下剋上 資金難克服した広島ならではの「組織力」と「営業力」
広島に新しい「誇り」が誕生した。バスケットボールBリーグで初優勝した広島ドラゴンフライズ。28日に横浜で行われたファイナル第3戦で前年覇者の琉球ゴールデンキングスを下し、2勝1敗でプロ野球のカープ、Jリーグのサンフレッチェに続く「日本一」のタイトルを獲得した。国内3つのプロリーグで、同じ市に本拠を置くチームが優勝したのは初めて。東京や大阪、名古屋、横浜など大都市でもできない快挙を支えたのは「王国」広島の力だった。(文=荻島弘一)
日本生命 B.LEAGUE FINALS 2023-2024
広島に新しい「誇り」が誕生した。バスケットボールBリーグで初優勝した広島ドラゴンフライズ。28日に横浜で行われたファイナル第3戦で前年覇者の琉球ゴールデンキングスを下し、2勝1敗でプロ野球のカープ、Jリーグのサンフレッチェに続く「日本一」のタイトルを獲得した。国内3つのプロリーグで、同じ市に本拠を置くチームが優勝したのは初めて。東京や大阪、名古屋、横浜など大都市でもできない快挙を支えたのは「王国」広島の力だった。(文=荻島弘一)
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ワイルドカードから「下剋上」の初優勝を果たし、今季限りで引退する朝山正悟は「この優勝で、カープやサンフレッチェに少し近づけたかな」と胸を張った。チャンピオンシップのMVPに輝いた山崎稜は「広島はカープとサンフレッチェの知名度が高くて、ただそれに負けたくないという思いがあった」と明かした。
アルバルクが優勝しても、同じ東京の巨人と比べることはない。すべて千葉県のチームといっても、ジェッツ優勝で柏レイソルや千葉ロッテマリーンズの優勝が話題になることもない。バスケットボールの会場で、野球やサッカーが語られる。「スポーツ王国」広島のドラゴンフライズならではだった。
もともと、広島はスポーツが盛んだ。1928年、陸上三段跳びで日本人初の五輪金メダリストとなったのは、広島出身の織田幹雄。野球やサッカーも戦前から全国的な強豪校が多く、戦後に原爆からの復興へ市民の支えとなったのがカープの存在だった。球団が市民の希望になり、市民の「たる募金」が資金難の球団を救った。
そんな「スポーツ王国」が2000年、各競技のトップリーグ所属チームによる「トップス広島」を結成した。「すべての広島の人々が、すべての広島のスポーツを応援する」がコンセプト。ハンドボールの日本リーグを各8回制した男子の安芸高田ワクナガ、女子のイズミメイプルレッズ、14-15年のVプレミアリーグで初優勝したJTサンダーズにカープ、サンフレッチェなど全国的なトップチームが名を連ねる。
日本初の画期的な異競技交流組織。05年に発足した日本トップリーグ連携機構は団体球技の国際的な競技力向上に貢献しているが、それよりも前から広島では「トップチーム」同士の連携を進めていた。
野球やサッカー、さらにハンドボールやバレーボールが全国的に活躍する中、バスケットボールだけは蚊帳の外だった。W1リーグに所属した広島銀行が03年に廃部となってからは、全国リーグに参加するチームもなし。「広島でもバスケットボールを盛んにしたい」とドラゴンフライズが発足したのは2013年。2016年創設のBリーグにも参加したが、トップス広島への参加は、B1昇格の2020年だった。
カープがサンフレッチェカラーの紫色のユニホームを着る、サンフレッチェが赤いユニホームで試合をする……こんな異競技交流で新たなファン獲得につなげるのも広島流の手法。3番目のプロクラブも「先輩」たちの力を借りた。カープとの「コラボゲーム」を実施し、新井監督や選手を始球式で招待した。今回のファイナルでは、サンフレッチェが「広島スポーツぶちあつ応援!」として今年完成したピースウイング広島でパブリックビューイングを開催した。