なぜ、高校生が平日の金曜夜に試合をするのか アメフト部の運営から透ける米国特有の部活事情
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「高校アメフトが金曜日の夜に試合をする理由」について。
連載「Sports From USA」―今回は「高校アメフトが金曜日の夜に試合をする理由」
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「高校アメフトが金曜日の夜に試合をする理由」について。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
◇ ◇ ◇
アメリカの高校アメリカンフットボールを描いた「フライデー・ナイト・ライツ」という名作ノンフィクションがある。これは、高校のアメリカンフットボールの試合が金曜日の夜に試合が行われていることに由来している。
なぜ、高校のアメリカンフットボールの試合は金曜日の夜に行われるのか。米国のアメリカンフットボール部の試合は、金曜日が高校、土曜日が大学、日曜日がNFLと分かれていて、それぞれ重ならないようにしている。日曜日には、米国の高校運動部の公式戦は組まれることがほとんどない。これは、教会に行くことを考慮したものだろう。私は、高校生たちが金曜日の授業を終えてから試合を行うので、夜になるのだと思っていたのだが、どうやら、それだけではないらしい。
アメリカで、アメリカンフットボールの試合で初めてナイトゲームが行われたのは1892年のことだ。マンズフィールド大学対ワイオミング神学校との試合だったとされている。高校のアメリカンフットボールの試合で、初めてナイトゲームが行われたのは、1925年11月19日で、ワイオミング州のミッドタウン高校対キャスパー高校戦だったという。その後、全米で、夜に高校のアメリカンフットボールの試合をするということが急激に広がっていった。
高校生が夜に試合を行うことはすぐに受け入れられたのだろうか。高校のアメリカンフットボールの初のナイトゲームが開催されて7年後の1932年10月号の「The Journal of HEALTH AND PHYSICAL EDUCATION(健康と体育教育ジャーナル)」では、アメリカンフットボールのナイターに賛成する教育者と、反対の教育者が、誌上討論を繰り広げている。
ナイトゲームを推すカンザス州トピカの体育教育局のバーネット氏は、カンザス州では5年前に大学のナイトゲームが行われて以来、ほとんどの大学が照明を設置し、多くの高校がこれを利用しているとしている。ナイトゲームの利点について「より多くの観客を集めることができ、財政的な利益を増やすことができる」ことを挙げている。アメリカの高校の運動部の試合は、プロや大学ほど高額ではないが、わずかながらでも入場料を徴収するので、観戦者が多いと入場料収入を増やすことができる。これらの収入は活動資金に充てられる。
また、バーネット氏はこのほかにも、カンザス州ではアメリカンフットボールのシーズンである晩夏から秋は、日中の気温が高いため、夜のほうが試合に適した気候であるとし、さらに、金曜日の日中に試合を行っていたときには、アメリカンフットボールの試合に間に合うように、早目に下校することが慣例であるため、ナイトゲームのほうが学業にとってもよいとしている。