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「チームの雰囲気が悪くなるなら…」 高校バスケ名門・能代工の元エースを変えた大学時代の転機

バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、前身の東芝時代の栄光を受け継ぐ国内屈指の強豪クラブ。熱狂的なファンがアリーナをブレイブレッドに染め上げ、今季も上位争いを演じてきた。そんな名門のリアルな姿に、選手のインタビューやコート内外のストーリーで迫る連載。今回は2012年の加入以来、攻守にわたって輝きを見せるクラブ一筋12シーズン目の長谷川技だ。前編では高校・大学時代を振り返りながら、チームを陰で支えるプレースタイルが確立された背景に迫った。(取材・文=青木 美帆)

前身の東芝時代から通算12シーズン。長谷川技はいぶし銀のプレーで川崎ブレイブサンダースを支えている【写真:B.LEAGUE】
前身の東芝時代から通算12シーズン。長谷川技はいぶし銀のプレーで川崎ブレイブサンダースを支えている【写真:B.LEAGUE】

連載「川崎ブレイブサンダースNOW」第5回、長谷川技インタビュー前編

 バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、前身の東芝時代の栄光を受け継ぐ国内屈指の強豪クラブ。熱狂的なファンがアリーナをブレイブレッドに染め上げ、今季も上位争いを演じてきた。そんな名門のリアルな姿に、選手のインタビューやコート内外のストーリーで迫る連載。今回は2012年の加入以来、攻守にわたって輝きを見せるクラブ一筋12シーズン目の長谷川技だ。前編では高校・大学時代を振り返りながら、チームを陰で支えるプレースタイルが確立された背景に迫った。(取材・文=青木 美帆)

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「いぶし銀」「職人」「仕事人」。

 長谷川技は、このような言葉でたとえられることの多い選手だ。

 170センチ台のポイントガードから2メートル台の外国籍選手フォワードまで、相手のキープレーヤーを的確に抑えるディフェンス力は、コーチ陣やチームメートたちから絶大な信頼を得ている。また、左右のコーナーから放たれる3ポイントシュートは高精度。コーナー付近で待ち受けている彼にボールが渡り、シュートが決まった時の歓声は、ひときわ大きくなる。

「気にしていないのが半分、嬉しいのが半分、ですかね。プレー的には目立たないけど、そういうところを見てくれている方がいるのは嬉しいです」

 冒頭のような二つ名についてどう思っているかと尋ねると、長谷川はこう言った。

 クラブが設けたキャッチフレーズは『UNSUNG HERO(陰の英雄)』。上記のようなプレーでチームに貢献しつつ、どんなビッグプレーを成功させても基本はポーカーフェイス。過去のインタビュー記事を紐解いてみても「自分は脇役でいい」「自分が目立ちたいとは思わない」といった言葉が随所に出てくる。

 しかし、高校時代まで彼はチームの絶対的なエースだった。特に、高校バスケの名門として知られた秋田県立能代工業高校(現・能代科学技術高校)3年時は、同校のエースナンバー「7」をまとい、インターハイ(全国高校総体)と国体のW優勝の原動力として大活躍していた。

 190センチの上背でボール運びからドライブ、3ポイントシュートと何でもでき、当時、洛南高校(京都)に所属していた1学年下の比江島慎(現・宇都宮ブレックス)に「バスケ人生で初めて『敵わない』と思った」と言わしめるほどの突出したプレーヤーだった。

 そのような選手が、個の力で状況を打破するのでなく、与えられた役割を遂行することでチームに貢献するロールプレーヤーへと変貌していく過程がどのようなものだったのか。かねてから、いつか突き詰めたいと思っていたトピックだった。

 高校時代を振り返る話の中で、長谷川は興味深い発言をした。

「高校の時は優勝以外の目標が認められていないような感じだったので、勝つことだけを意識した結果、点を取りに行っていたところもありました。とにかく勝ちたいから点を取っていただけ。『目立ちたい』とはまったく思っていなかったです」

 つまり、高校時代の長谷川は自らの欲求に従ってというより、チームの役割に従って点を取っていたということになる。それ以前のことまでは掘り下げられなかったが、元々エゴでプレーするという意識が希薄な選手だったようだ。

 得点以外のプレーに役割を見出すようになったのは、強豪・拓殖大の3年時だったはずだと長谷川は回顧する。

「1学年下に長谷川智伸(現・福井ブローウィンズ)というシューターがいて、(藤井)祐眞が入学してきたので、任せるところは任せようかなと。チームにビッグマンがいなくて190センチの僕が4番ポジション(パワーフォワード)をやらざるを得なかったというのも大きかったですし、ボールを持ちたい選手がいっぱいいたんでね。そこにボールを回さずチームの雰囲気が悪くなるんだったら、回すから気持ち良くプレーしてくれよという感じです(笑)」

 チームがシーズン当初から好成績を挙げたことも手伝って、長谷川は「チームの循環を良くするために自らが動く」というアクションに大きな手応えを得て、それを自分の行動指針とし、今のようなプレースタイルが確立されていったと説明した。

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