「野球でクルマが何台売れるかといえば…」 復活する日産自動車野球部、新監督が語る休部のリアル
長らく続いた日本経済の不振で、チーム解散や廃部の相次いだ社会人野球界にひとつの“奇跡”が起きようとしている。日産自動車が、都市対抗野球で優勝2度を誇る名門野球部を2025年から復活させるというのだ。「野球部復活プロジェクト」を率い、新監督就任が決まっている伊藤祐樹氏は、主将や日本代表を経験し、チームが存在しない間も活動を絶やさなかった文字通りの生き字引。2009年を最後に、15年に及ぶ活動休止期間に向き合った現実を振り返ってくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部、羽鳥慶太)
社会人野球のチームはこうして消える…新監督の伊藤祐樹さんが直面した現実
長らく続いた日本経済の不振で、チーム解散や廃部の相次いだ社会人野球界にひとつの“奇跡”が起きようとしている。日産自動車が、都市対抗野球で優勝2度を誇る名門野球部を2025年から復活させるというのだ。「野球部復活プロジェクト」を率い、新監督就任が決まっている伊藤祐樹氏は、主将や日本代表を経験し、チームが存在しない間も活動を絶やさなかった文字通りの生き字引。2009年を最後に、15年に及ぶ活動休止期間に向き合った現実を振り返ってくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部、羽鳥慶太)
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強烈に蒸し暑かった昨夏、お盆過ぎのことだった。待ち続けた朗報がもたらされた。
伊藤さんは2022年から、関連会社の三菱自動車に出向し、愛知県岡崎市にある三菱自動車岡崎野球部でヘッドコーチを務めていた。そこで耳に入ってきたのが「日産野球部が復活する。近いうちに正式発表する」という風の噂だった。もちろん、これほど嬉しいことはない。ただ一方では「信じられない」という気持ちが先に立った。
休部時には37歳で、コーチ兼任選手だった伊藤さんは、その後も日産に残り社業に従事してきた。だからこそ見える現実があった。野球部の復活を誰よりも願う一方で、実際には難しいのではと考えるようになっていたという。
「会社にいるので、いろんな状況もわかります。復活を目指してやっているとは言いながら、状況的に厳しいだろうなと思う自分もいました。野球部は、会社として線引きして、振り落としたものだからです……」
企業が一度やめたものを、再び動かすためにどれだけのエネルギーが必要か。残ったからこそ肌感覚でわかる。「費用対効果ではないですが、会社がお金を使うとなればそれなりの成果が求められます。じゃあ、野球部の存在でクルマが何台売れるかといえば……。厳しいんじゃないかと思っていたのが本音です」。それでも会社は野球部復活を選んだ。こちらにも、向き合っている現実があった。