世界と勝負できない日本マラソン界の現状 満たせぬ強者の条件、東京マラソンで弱点浮き彫りに
「五輪を狙う人は全員、力が入っちゃって、空回りというか……」。瀬古利彦氏の言葉が、世界と勝負できない日本マラソン界の現状を表していた。3日に行われた東京マラソン。男子のパリ五輪代表選考レースだったが、代表内定条件となる2時間5分50秒の設定タイムを切る選手はいなかった。
五輪など大舞台で求められる課題「狙ったレースで結果を出せない」
「五輪を狙う人は全員、力が入っちゃって、空回りというか……」。瀬古利彦氏の言葉が、世界と勝負できない日本マラソン界の現状を表していた。3日に行われた東京マラソン。男子のパリ五輪代表選考レースだったが、代表内定条件となる2時間5分50秒の設定タイムを切る選手はいなかった。
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マラソンのパリ五輪代表は、男女ともに昨年10月のMGC2位までが内定。残り1枠を「MGCファイナルチャレンジ」の3レースで争った。昨年12月の福岡国際、今年2月の大阪では設定記録突破者が出ず、今回が五輪へのラストチャンス。「2時間5分50秒以内で日本人トップ」はパリ五輪に直結していた。
ところが、条件をクリアした選手はいなかった。簡単ではないが、決して難しい条件ではなかったはずだ。鈴木健吾(富士通)は2時間4分58秒の日本記録保持者だし、山下一真(三菱重工)は昨年の東京マラソンで2時間5分51秒をマークしている。男女とも優勝者が大会記録を更新したように、天候や気温など条件にも恵まれていた。それでも、狙ったタイムは出なかった。
山下は8キロ過ぎに集団から脱落し「こんなに走れないとは」と肩を落とした。鈴木も27キロで集団から遅れ「力がなかった」と言葉を絞り出した。日本人トップの9位でゴールした西山雄介(トヨタ自動車)は設定タイムから41秒遅れ。「オリンピックに行きたかった。悔しい」と号泣した。
ペースメーカーが不安定だったことも影響したかもしれない。西山は序盤での転倒も体力ロスにつながったのだろう。ケガなどで満足に練習が積めなかった選手もいる。それでも、狙ったレースに照準を合わせ、万全に仕上げることも強者の条件。これほど明確な目標があっても、誰一人突破できなかった。
山下はレース前の会見で「昨年の記録(2時間5分50秒)は何も狙わずに走ったら出た。記録を狙う今回は違う」とプレッシャーを隠さずに話していた。瀬古氏も「狙ったレースで結果を出すのは難しい」とした。しかし、それができなければ五輪など大きな大会で勝負することはできない。