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「由伸2世」と呼ばれた谷田成吾、最後のプロ挑戦の告白「今年ダメなら野球辞めます」

「『由伸2世』が僕を成長させてくれた」と語った【写真:編集部】
「『由伸2世』が僕を成長させてくれた」と語った【写真:編集部】

今、思う「谷田成吾と由伸2世」の関係性「『由伸2世』が僕を成長させてくれた」

 振り返ってみると、一人のアマチュア選手の動向が、こうも注目されるのは良くも悪くも「由伸2世」という肩書が大きかっただろう。野球人生において、常に付いて回る存在だった。ただ、偉大すぎる本家と比較される「○○2世」の常套句は、ファンにアレルギー反応を呼びやすく、メディアが一方的に背負わせてしまうものは大きい。

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 私自身、スポーツ紙の記者として慶大時代の谷田を3年間追いかけ、少しでも紙面で大きく扱いたいと「由伸2世」というフレーズで記事を書いた。改めて、当時のことを詫びた。25歳となった今、「谷田成吾と由伸2世」の関係性を当事者としてどう思っているのか。率直に聞くと「どういうものだったのかなあ……」と笑い、こう続けた。

「本当に僕が初めてファンになった選手も、初めてユニホームを買った選手も高橋由伸さんだったんです。憧れの選手だったので、最初は素直にうれしかったし、そういう選手になれるように頑張ろうと思いました。良い面で言えば、その名前で自分を知ってくれた方も多いし、応援してくれた人もいた。それはありがたかったです。一方で良くない面で言えば、ドラフトで呼ばれなかったり、結果が出なかったりした時、必要以上に言われることもあった。『自分が言ったわけじゃないのにな……』と思った時期もある。でも、そういうことがあったから、いろんな考えができるようになったと思うんですよね。

 良い気持ち、嫌な気持ちで浮き沈みは欲しくないけど、それが自分を成長させてくれることには間違いない。悪く言う人もすべては野球ファン。自分が目指すプロの世界もそういう場所だと思うから、無関心よりもきっといい。それ以上に応援してくれている人もいるし、心の中で頑張れと思ってくれる人がいることも今回の挑戦で感じました。だから、今は気にならない。それもすべて普通なら経験できなかったこと。名前をつけられたことが重圧にもなったけど、重圧も成長につながる。だから、良かったり悪かったりがありましたけど、『由伸2世』が僕を成長させてくれたんじゃないかと、今は思います」

「10.25」――。この日がいずれにせよ、野球人生にとって大きな区切りとなる。ドラフト会議で呼ばれればプロ入り、呼ばれなければ野球引退。二つに一つだ。シーズンは終了したが、8日から始まったフェニックスリーグでは四国アイランドリーグ選抜としてNPB球団との実戦をこなし、最後までアピールを続ける。

「今年1年、周りに迷惑をかけながらいろんなチャレンジをさせてもらいました。もしプロになれた時、野球が取り上げられるかもしれないという気持ちで続けた経験があれば、1日1日、1年1年が最後と思って毎日、毎年を過ごせるようになる。プロになれたら前の自分よりいい結果が残せるという気持ちもあります。ただ、もしプロがダメだったとしても、今はやり切ったと思えるようなところでやってこられたと思っているし、こういう環境を与えてくれた徳島にも本当に感謝しています」

 高校時代から「ドラフト候補」と言われ続け、これだけ注目されながら叶わないことも珍しい。そして、アマ球界を騒がせた選手が今、夢だけを追いかけ、未来の保障もない月給10万円台の独立リーグでプレーする。しかし、悲壮感はない。「野球、今も楽しい?」と聞くと、迷いなく「楽しいですね」と即答した。だから、25年の人生の選択に後悔はないと言い切れる。

「後悔はないですね。選択が正しかったかどうかは分からないけど、後悔はないです。こうしたら良かったかもという部分はあるけど、結果、自分という人間はそういう選択をした。棒を倒してどっちに転ぶかで決めたわけじゃなく、経験を踏まえて考えて決めたので、そこに後悔してもしょうがない。今ある状況でいかにベストを尽くせるか、自分の目標に向かって頑張れるかが大事。今はただ、プロを目指せる最後の最後の真剣勝負を楽しみたいと思っています」

 選んだ道が正しいかどうかなんて、誰にも分からない。ただ、選んだ道が「正しかった」と言えるように努力する。それだけは全うしてきた。「由伸2世」を背負い、育てられた男が、谷田成吾という一人の野球選手としてまもなく、運命の日を迎えようとしている。

【取材後記】谷田成吾「もしプロがダメなら…」 取材の最後に明かした“ドラフト後”に描く人生

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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