批判覚悟で五輪メダリストが選ぶ「休養」の効果 メディア露出で競技普及、昔はTV出演のために引退も
東京五輪柔道男子100キロ級金メダリストのウルフ・アロン(パーク24)が14日、パリ五輪代表に内定した。11日にはバスケットボールの女子日本代表が世界最終予選でパリ五輪キップを獲得。歓喜の輪の中に、東京五輪で銀メダルに輝いた馬瓜エブリン(デンソー)がいた。
スポーツライター・荻島弘一氏が考える、最近増えるアスリートの「休養」
東京五輪柔道男子100キロ級金メダリストのウルフ・アロン(パーク24)が14日、パリ五輪代表に内定した。11日にはバスケットボールの女子日本代表が世界最終予選でパリ五輪キップを獲得。歓喜の輪の中に、東京五輪で銀メダルに輝いた馬瓜エブリン(デンソー)がいた。
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ともにテレビでもおなじみになった顔。東京五輪のメダルを手に、その後のメディア露出で一気に知名度が上がった。スポーツ番組だけでなく、情報番組やバラエティ番組にも出演、ともに明るいキャラクターとトーク力で人気者になった。
競技を離れるのは勇気がいる。休んでいる間に体力は落ちるし、体重や体調管理も難しい。復帰しても感覚を取り戻すには時間がかかる。世界のトップを争うレベルまで戻すのは、簡単ではない。仮にトップフォームに戻らなければ「競技に集中しないから」と批判もされるだろう。それでも、覚悟を決めて休み、メディアにも積極的に登場した。
ウルフは「競技の普及のため」と話した。子どもを中心に柔道離れは著しい。全日本柔道連盟の登録者数は04年の20万人から23年には12万4000人まで激減した。「お家芸」と言いながら、50万人を超えるフランスの4分の1以下。「自分を通して、柔道を知ってほしい」と言い続けてきた。
自らの人生を見つめなおして休養を決めたエブリンにも「女子バスケットボールを知ってもらいたい」という思いがあった。スポーツビジネスなど幅広く経験を積みながら、テレビに出て女子バスケットをアピール。Bリーグが活況を呈する男子に比べて苦戦するからこそ「女子も頑張っています」と繰り返してきた。
競技を引退してからタレントに転身する五輪選手は多いが、現役選手が競技以外でメディアに露出するのは珍しい。だからこそ、その効果も大きい。ウルフを見て「自分も柔道がしたい」という子どもが出てくるかもしれないし、エブリン見たさにWリーグを観戦するファンが増えるかもしれない。
かつて「アマチュア規定」が厳しかったころは、現役選手がテレビに出ること自体がありえなかった。84年ロサンゼルス五輪体操金メダリストの森末慎二氏が人気テレビ番組「笑っていいとも!」に出るために引退したのは有名な話。その後、アマチュア規定はなくなったが、現役選手が競技以外の活動をするのはハードルも高く、なかなかテレビで活躍する選手は出てこなかった。