YouTube収益化にNFTアート販売 バスケ日本代表経験者が“コート外”の活動にも全力を注ぐ理由
NFTアートのキャラクターに込めたメッセージ
編集体制に目処もつき、その後に茨城ロボッツ、そして島根に移籍してからもYouTubeへのコンスタントな投稿が続く。この間、谷口は日本代表にも招集され、FIBAワールドカップ予選のコートにも立った。昨季は自身初となるBリーグチャンピオンシップに出場するなど、徐々にコート内外が「両輪」となって充実し始めている。
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活動の幅が広がるなかで、谷口は画家の左右田薫氏と出会った。左右田氏は、シーホース三河のホームコートMC・小林拓一郎氏が運営するバスケットコート「グレープパークコート」の一角に、NBAレジェンドのコービー・ブライアント氏の壁画を描き、そこを谷口が訪れたのが出会いのきっかけだった。谷口と左右田氏が、お互いの愛犬たちをキャラクター化して商品化にこぎ着けると、交流のある選手たちから「うちで飼っている犬や猫も描いてほしい」と、話が広がっていく。そうした活動が、今度はオファーにつながった。
「キャラクター事業としてNFT制作へ大きくなりつつあったところでオファーをいただいたのですが、作ってきたコンセプトや世界観についてはブレさせたくなかった。あくまで、僕と左右田さんがキャラクターやストーリーを作りつつ、技術的な部分だけで参画いただけるなら、という条件を受け入れていただきました」
こうして谷口がファウンダーとなって、NFTプロジェクト「WAN」が始まった。WANは「WORLD ANIMAL narrative.」の略で、それを訳した「世界動物モノガタリ」という副題が付く。犬や猫だけでない、様々な動物を登場させる思惑があったのと同時に、谷口は制作にあたっての「モノガタリ」を、自分自身に当てはめた。
「僕は小学生の頃にすでに身長が190センチあって、『その体格でバスケットをやっていて、うらやましい』と言われることもありました。だけど、僕自身は何をしていても友だちよりも目立ってしまうし、やっていないことで叱責されたこともある。注目を浴びるのが嫌になる時期もありました」
バスケットの世界ではこの上ない武器である身長も、見方が変わればコンプレックスになることもある。それを谷口自身が感じながらも乗り越えたように、自らの「特徴」や「個性」であると解釈し直して、アートの世界を練った。WANでの第1号のキャラクターは、体の大きさや首の長さが注目を集めるキリンがモチーフ。ネーミングにおいては、バスケット界で自らの高さを存分に活かし続けた、NBAの名選手になぞらえて「ジャバー」と名付けた。
「キャラクター作りのところから動物たちの特徴も意識していて、デザインができ上がるなかで『この子はどんな生活を送って、どんな風に特徴と向き合っているのだろう』と考えています。世の中には自分の特徴に悩んだ結果、亡くなってしまう人もいます。個性は悪いことではない、その人が悪いことをしたわけでもないのなら、『違っても良い』というのを伝えたい。そうしたメッセージを盛り込んだ形にしたいんです」