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「ファウルスローやったやん、ずっと」 万歳から一転…失意の呟きが零れた久保竜彦、中目黒最後の夜

先制ゴールの瞬間、席から立ち上がって息を呑んだ久保【写真:荒川祐史】
先制ゴールの瞬間、席から立ち上がって息を呑んだ久保【写真:荒川祐史】

「楽しかったよ、中目黒。飲みすぎたけど。やっぱ、サッカーみんなで観ると楽しいよね」

「板倉、大丈夫か。やらかしそうな感じがする」

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 立ち上がり早々。「プシュッ!」と今夜もエビス350mlの快音を響かせた直後、不吉な言葉を口にした。

 前半28分。もぞもぞとトイレに立とうとしたが、なぜかテレビの前にとどまり、画面近くの席にもう一度座る。何かの予感か。その直後だ。連係から攻め上がった守田が右足を振り抜き、先取点。「んあー! 来たよー! ヤバイね! スゴイね!」

 画面にかじりついて絶叫。「自分で作って、自分で決めてスゴイね。上手かったやん」。そう言い残し、急いでトイレに消えた。
 
 幸先良く先制したが、やはり気になるのは日本の4番。「板倉のところ、怖いね」「ポジションが悪いんよ」。再三、不安を口にしながらイランに警戒を強める。「怖いね、嫌やね。イラン、高いやつおらんのやな。アジジみたいな感じやな」

 後半10分。イランのアズムンが板倉の裏を取った味方にラストパスを供給。同点弾を許した。「うめーな、20番(アズムン)。しょうがねえ、上手すぎたよ」

 まだ同点に追いつかれただけ。勝ち越しを祈りながら、驚異の運動量で攻撃にも守備にも顔を出す前田に驚いて、つぶやく。「乳酸が止まらんのやろな。どっから出とるん。頭から出とるんか」。しかし、その時は後半アディショナルタイム6分に訪れる。

敗戦の瞬間、険しい表情でテレビ画面を見つめる久保【写真:荒川祐史】
敗戦の瞬間、険しい表情でテレビ画面を見つめる久保【写真:荒川祐史】

 日本陣内深く、イランにロングスローから攻撃を展開される。左サイドのクロスのこぼれ球に板倉と冨安が重なり、直後に相手を倒した板倉がPKを献上。まさかの展開。「コイツが止めるやろ」と鈴木に期待したが、しかし――。

「(直前のロングスローは)ファウルスローやん。ずっとファウルスローやったやん」。悔しそうにうつむき、頭を抱えた。

 そして、あっという間に迎えた終戦のホイッスル。エビス350mlを飲み干し、つぶやいた。

「まあ、しゃあないね。ほぼ板倉の裏を狙われとったよね。怪我でもしとったんか。完敗やね」

 そう言い残し、またトイレに消えた。

 すっきりした状態で実施した解説インタビュー。イラン戦の敗因から、今大会で残った課題、次回W杯へ覚醒を期待する選手まで。思いの丈をぶちまけた。

 日本の敗退とともに、この観戦記もフィナーレ。3週間、全5試合。「サッカー観るより釣りしとる方が楽しいけえ」と言う男の歓喜と興奮が、何度も中目黒の夜に響いた。そして、雄叫びの数だけビールもたくさん飲んだ。

「決勝、優勝して朝までみんなで飲みたかったね。でも楽しかったよ、中目黒。飲みすぎたけど。やっぱ、サッカーみんなで観ると楽しいよね」

 日本は次回W杯に向け、新たな旅路に出る。まもなく長女に第1子が生まれ、47歳のおじいちゃんになるドラゴンは「まあ、俺は釣りでもして、また楽しいことでもないかなっ~て探すよ。そんな感じよ」と言った。ただ、ボソリと付け加えた一言が、久保竜彦らしかった。

「今日は悪酔いすんなあ。飲まんでどうするん。とことんやろ」

 今夜もいつもの一張羅の黒のジャージとビーチサンダルで、中目黒の夜に消えていった。

 なお、インタビュー記事は近く配信する。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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