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V大本命日本も苦しむアジア各国強化の背景 名将招聘、アジア枠8.5で「W杯は無理」中堅国も本気に

見逃せないPK戦の多さ、アジアでは意外と強い日本

 もう1つ、見逃せないのはPK戦の多さだ。アジア杯で初めて行われたのは72年大会。ただ、92年大会までは決勝トーナメントは準決勝からだったが。96年大会で8チームの決勝トーナメントになってから急増。07年大会では実に8試合中4試合がもつれこんでいる。過去決勝トーナメント87試合のうち、実に22試合がPK戦決着。4試合に1試合以上という割合は、W杯の約20%をしのぐ。

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 日本にとって記憶に新しいのは、22年W杯カタール大会決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦。1-1からPK戦で敗れ、目標だったベスト8入りを逃した。W杯では10年南アフリカ大会でも16強でパラグアイに敗れるなど、PK戦では2戦2敗と結果が出ていない。

 ただ、アジア杯では、いい記憶もある。名シーンとして有名なのが、04年大会1回戦のヨルダン戦。途中でゴールが変わる異例の戦いになったが、GK川口能活が神セーブを連発して逆転勝ちした。11年大会準決勝ではGK川島永嗣が2本連続で止めて韓国を破った。日本はA代表で臨んだ過去8大会のうち実に半分の4大会で計5回のPK戦に臨み、3勝2敗。前述の2回はともに優勝しているから、いかにPK戦が重要かがわかる。

 W杯では22年大会決勝でフランスを破ったアルゼンチンが7戦6勝、ドイツとクロアチアが4戦全勝とPK戦を得意にしている。アジア杯でもサウジアラビアが4戦全勝と得意。逆にイランは3位決定戦で2勝した以外は6敗と苦手にしている。アジアの強国ながら80年代以降決勝進出すらないのは、PK戦で勝てないからだ。

 そんなイランや0勝2敗のウズベキスタンが日本側のヤマ。PK戦に強いサウジアラビアやイラク(2勝0敗)が逆ブロックに入ったのは、日本にとって朗報か。アジア杯では意外にPK戦に強い日本。川口、川島に続いて今大会の若いGKが経験を積み、自信をつけてくれるなら、PK戦も悪くはない。もちろん、90分、いや延長を含めて120分で勝ち切る方がいいのは当然だが。

 強くなったのは日本だけではない。アジアも強くなっている。とはいえ、日本が今大会の優勝候補筆頭であることは揺るがない。英大手ブックメーカーの予想を見ても分かる。ウィリアムヒル社のアジア杯優勝オッズは、28日の時点で日本がトップの2.62倍。2番目は韓国の4.50倍で、イラン(6.00倍)、オーストラリア(7.50倍)、開催国カタールとサウジアラビアが11倍で続いている。

 開幕前の同社のオッズは日本優勝は3.00。22年W杯前は1番人気のブラジルですら5倍程度だから、いかに日本が「本命」視されているかが分かる。控除分を考えずに乱暴な計算をすれば、同社が予想する日本の優勝確率は38.1%、韓国が22.2%でイランが16.7%ということになる。「優勝間違いなし」と思う人は低く感じられるかもしれないが40%に迫る数字は「大本命」といっていい。W杯優勝を目指して、まずはアジアの王座を奪還してほしい。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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