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高校教諭2人に訪れた突然の転機 東洋大・酒井監督夫妻、「福島→埼玉」行きを決断した激動の3か月

納得のいく事後環境を整え就任を決断

 最終的に、俊幸が東洋大学の監督を引き受ける決断を下したのは、2月中旬。自身が納得のいく事後環境を整えることを条件に引き受けた。

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 2人は当時の福島県陸上競技協会会長をはじめ、国体の監督、それぞれの学校の校長先生などお世話になった方々に感謝とお詫びを伝える一方、俊幸の恩師である佐藤尚元監督や理事等、東洋大学の関係者が奔走し、俊幸の後任には、実業団選手を引退後に指導者の道を目指していた松田和宏が就任。松田は、学法石川高校を男女ともに全国の強豪チームに育て上げ、現在も指導を続けている。

 俊幸と瑞穂は、「チームの伝統をつなぐこと」と「箱根駅伝優勝」という命題に応えるべく、東洋大学陸上競技部の拠点となる埼玉県川越市で、新たな生活のスタートを切った。(文中敬称略)

■酒井俊幸(さかい・としゆき)

 1976年5月23日生まれ、福島県出身。学法石川高(福島)2年時に全国高校駅伝に出場。東洋大学時代は1年時から3年時まで箱根駅伝に出走し、2年時はシード権獲得に貢献。4年時は出走できなかったが、主将としてチームを引っ張った。卒業後はコニカミノルタに入社し、全日本実業団駅伝では2001年からの3連覇の中心選手として活躍を見せた。現役を引退し、2005年4月から母校である学法石川高の教諭に。2009年4月から母校・東洋大学陸上競技部(長距離)の監督となり、以来、箱根駅伝では総合優勝3回を含む10年連続総合3位以内の成績を残したのをはじめ、次回大会まで監督就任以来16年連続出場を継続中。学生三大駅伝の出雲駅伝(2011年)、全日本大学駅伝(2015年)でも大学史上初の優勝を飾っている。2017年まで指導していた競歩選手、長距離の卒業生を含め、五輪や世界陸上の日本代表選手を輩出している。

■酒井瑞穂(さかい・みずほ)

 福島県出身。旧姓・佐藤。福島西女高(現・福島西高)時代には国体3000メートル競歩で6位入賞、日本女子体育大学では日本学生選手権5000メートル競歩で2年連続入賞を果たしている。大学卒業後は福島県で公立高校の教員となり、国体の福島県チームの強化スタッフを務めるなど、高校生選手の育成にあたり、教え子のなかには東洋大に進学した2003年パリ世界選手権20キロ競歩に出場した松崎彰徳がいる。2003年に結婚後も仕事を続けていたが、2009年に俊幸が東洋大学監督に就任すると、教員職を辞し、家族で埼玉へ。東洋大学では監督補佐の立場で、主に選手たちの日常生活の指導を担当。2018年からは競歩コーチの肩書きも加わると、東京五輪銀メダルの池田向希と世界陸上2大会連続メダル獲得の川野将虎(ともに現・旭化成)を指導し、現在まで指導者として国際大会でメダル8個を獲得している。

(牧野 豊 / Yutaka Makino)

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牧野 豊

1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「NBA新世紀」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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