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日本の新お家芸スケボーはなぜこんなに強い 世界一の選手層、パリ五輪は「誰が出てもメダル候補」

世界一の選手層の厚さで五輪は出場するのが一苦労

 もう一つ、日本勢の躍進を後押ししたのが、新しいジャッジ基準への対応だった。五輪のスケートボードを統括するワールドスケートは、ストリート種目ではSLSと協力関係を結び、ジャッジシステムなどSLSのものを取り入れていた。しかし、この関係が昨年までで終了。五輪スケートボードはSLSと別路線を歩むこととなり、ジャッジシステムも見直された。

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 西川監督は「大きく変わるわけではないが、細かな点は違う」と新旧のジャッジの差を口にした。長くSLSを主戦場としてきた選手たちに戸惑いがあっても不思議ではない。準決勝後、白井が「ジャッジがおかしい」と発言した裏には、微妙に変わる基準への不信感があったのかもしれない。ワールドスケート基準のジャッジが安定するには、まだ時間がかかりそうだ。

 もっとも、日本チームの対応は迅速だった。今大会でも予選段階からジャッジの傾向を分析、早川コーチは「それぞれ、細かな指示は与えていた」と明かした。45秒のランの構成や、ベストトリックでのトリック選択など、戦略を駆使して高得点を導きだした。日本勢が決勝で次々と繰り出した新技や大技が効果的に得点につながったのも、こうした戦略があったからこそだ。

 好条件が重なって、日本はメダルラッシュをみせた。来年のパリ五輪への期待値も上がるが、西川監督は「そんなに簡単ではない」と苦笑いする。五輪競技になったことで、世界のレベルは急激にアップ。スケート大国ではない国からも新しい選手が次々と出てくる。

 日本選手にとっては、代表に選ばれるまでも大変だ。五輪有力候補がある程度決まっている国はいいが、日本は世界ランキング10位までに男子5人、女子6人と大混戦。「誰が出てもメダル候補」と言えるが、代表になるまでに神経をすり減らしそう。来年の6月まで世界ランキングのポイント対象大会は3つあるが、いずれも休めない状況が続きそうだ。

 さらに、SLSなど五輪とは無関係の大会もある。東京五輪前はSLSが世界ランキングのためのポイント付与大会だったが、今後はSLSでの活躍が五輪につながらなくなる。日程がタフになれば、故障の不安も増す。「パリを目指す選手には、予選大会を優先するように言ってある」と早川コーチは言う。

「誰が出てもメダル候補」のスケートボードだが、世界一の層の厚さを誇る日本から代表選手として出場するのが一苦労。本番以上に厳しい戦いが待っている。選手たちにとって、もうパリ五輪は始まっているのかもしれない。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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