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日本ラグビーは「世界トップ10でも恵まれている」 協会専務理事が代表新HCに求めることは?

防御優位の傾向を今回のW杯で再認識

 では、現役時代は日本代表でW杯にも出場した専務理事は、フランス大会で各国が見せた世界最先端のラグビーの潮流をどう受け止めているのだろうか。

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「W杯はやはり負けられない戦いなので、過去の大会でもそうですがディフェンスのレベルが順位にかなり影響してくる。後はキックの成功率ですね。これは、ラグビーだけじゃなくて、サッカーや野球もそうだろうと思います。やはりトーナメント戦で勝っていくためには、防御面の成熟度やレベルの高さが間違いなく影響してくる」

 防御優位という世界の趨勢は、南アフリカの連覇という結果で今大会も変わらなかった。強烈なフィジカルを武器に相手に重圧をかけ、鉄壁の防御で“負けないラグビー”を追求するのが、このチームの信条だ。その中で、岩渕専務理事はスタッツと呼ばれるゲームのデータなどによる選手、チームの評価ポイントが、これから大きく変化していく可能性を感じているという。

「面白いのは、ラグビーではW杯後にルールが変更されることが多いですが、その大半はアタック有利という傾向がある。すべてのルールが、おそらくエンタメ性を高くしたいという意味で、アタック側に傾くからでしょう。過去のルール変更を見ても、例えば得点が多くなる(トライの点数の4点から5点への増加)のもそうだし、相手の反則によるタッチキックが蹴った側のボールになるのもそうです。50:22(フィフティ・トゥエンティトゥー:センターラインより後方から蹴ったタッチキックが敵陣22メートルラインを越えた場合は、蹴った側のラインアウトになる)もそうです。でも、ルールの変更は攻撃優位なのにもかかわらず、W杯のようないわゆるピナクルイベント(世界の頂点を争うイベント)と呼ばれる大会では、やはりディフェンス力が高いチームが勝つ。そういう観点からも、我々はやはりディフェンスの強化がすごく重要だと考えています」

 日本代表は、スピードを武器にした攻撃を強みとするチームだ。もちろん専務理事も日本伝統のスタイルは認めているが、そのベースの上にいかに防御力を上げていくかが、ここから再びW杯でトップ8の座を取り返し、さらに上位へと食い込んでいくためには重要なチャレンジになると考えている。

「日本協会もそうですし、もしかしたらチーム、あるいは応援してくださるファンやメディアの皆さんもそうかもしれないですが、これまでは議論されてきたスタッツが、どちらかというとアタックの要素が大きかった。例えばスクラムやラインアウトの“成功率”とかですね。けれど、今回のW杯での日本代表のデータで興味深いものがあります。タックル成功率は20チーム中8位(87%)と決して悪くない。でもパッシブタックル(受け身になってしまうタックル)は65.3と、トップ8のチーム平均である41.3よりも多いのです。ラインアウトからの失トライは大会全体で多かったが、日本は失トライ14個のうち、起点がラインアウトだったものが5回と最多でした。だから、今後W杯で上位に入っていくためには、ディフェンスの部分のデータを重視し、レベルアップすることが必要です」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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