「年俸はいくらなんだ?」 欧州での失意を経た日本復帰、李忠成が再会した恩師にかけられた言葉
ザッケローニ監督からW杯メンバー発表前日にかかってきた電話
2014年ブラジルW杯の日本代表メンバー発表の前日には、監督のアルベルト・ザッケローニから電話があった。
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「選びたかったけれど、今回はそれができなかった。今まで本当にありがとう」
ありがたい電話だったが、反面W杯が消えたという現実は重かった。
「ザック監督は(吉田)麻也がいたこともあり、わざわざサウサンプトンまで来てくれて『試合に出ろよ』と激励してくれていましたからね。僕も『この人を男にしたい』と思って頑張ってきました。ただワールドカップという目標がなくなると心に大きな穴が開いて、モチベーションを保ち難くなりパフォーマンスを上げるのが凄く難しくなりました。今でも欧州から戻ってくる選手がいると、出て行く時の3割増しくらいの期待がかかる傾向があると思うんですけど、これは本当に難しいんです。だからファンの方々にも、復帰組を温かく見守って欲しいと思います」
サウサンプトンとの契約を終え、日本での復帰を考えた時に、真っ先に思いついたのはミシャの愛称で親しまれるミハイロ・ペトロヴィッチのことだった。
「広島に移籍した当初は、あまり好きになれなかった。でも試合に使われるようになってからは僕の見方も変わって最後はパパのような存在になり、彼には恩しかなかった」
李は日本に戻ると、早速ミシャと連絡を取り自宅を訪問して再会を果たした。
「ミシャ、また一緒にサッカーをやりましょう。僕を獲ってください」
「オレは今、浦和レッズにいるんだけど、年俸はいくらなんだ?」
最初から呆気ないほどに腹を割った話が進んだ。こうして李は、サウサンプトン時代に続き、赤いシャツに袖を通すことになる。
しかし待ち受けていたのは、必ずしも歓迎だけではなかった。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)