日本野球は世界と「全く別のことをしているのかも」 日本人投手がチェコで投げて感じた“強さの秘密”
エラーしても「まあいいじゃん」日本人と異なるメンタリティ
実は市毛は、チェコで主食として食べられている蒸しパンに似た「クネドリーキ」になじめなかったという。お米はスーパーなどで手に入ったため、食事は鶏肉などと組み合わせた自炊を主にしていた。
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お気に入りのチェコ料理は、生の牛肉をたたいてユッケ状にした「タタラーク」だ。「パンの上に乗せて食べるんですが、これはおいしかったですね」。1人当たりにすれば世界一の消費量を誇るビールも、アルコールの度数など様々な種類があることに驚いた。チームメートと飲みに行くと「みんなビールだけで、ガンガン飲むんです。おつまみもなしで」。公私ともにチェコに浸かって行く中で、チェコ人のメンタリティにも大きな影響を受けた。
「めちゃくちゃポジティブなんです。エラーしても『まあいいじゃん』という感じで。ちょっと衝撃的でしたね」
これは、昨冬プレーした豪州とも共通していた。市毛のデビュー戦でのことだ。フライを三塁手が落球し、失点につながったことがあった。「でも、打って取り返すからと。実際に打ち返してくれて勝てたんですけどね。常にそんな感じです。1個のエラーでクヨクヨしないで、すぐ切り替えるんです。細かいプレーというより“ベースボール”でした。僕らが楽しくやっていた少年野球の、すごくレベルが高い版といった感じでした」。
一方で、日本野球の強さもそこにあると感じた。「トップクラスのパワーと、頭を使う野球の激突というか……。全く違うことをしていると言ってもいいのかもしれません」。
帰国するとなった時、チームからは来季も戻ってほしいとの声がかかった。どうするかは決めていないが、今後はチェコ球界に飛び込む日本人も続くのではと感じている。
「本当に素晴らしい国です。今でもチームメートと連絡を取りますし、街の人もみんなフレンドリーで。あと穏やかで、セカセカしていないんです。プラハとか人はごった返していますけど、すごく余裕がある感じがして。そこは東京とは違いました」
日本の物差しでは図れない大らかさが、野球だけにとどまらないチェコの大きな魅力だ。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)