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知られざるチェコ野球に飛び込んだ日本人投手 スマホ駆使して17歳捕手に伝えた「日本野球」

チェコ代表のマルティン・ムジーク(右)と市毛【写真:本人提供】
チェコ代表のマルティン・ムジーク(右)と市毛【写真:本人提供】

グーグル翻訳を駆使…17歳の捕手に伝えていったこと

 そんな中でも、実力が頭抜けた選手がいた。チェコ代表の主力でもあり、WBCの中国戦で9回に逆転3ランを放ったマルティン・ムジークはチームメート。「年齢は僕の1つ下なんですが、とにかく人格者でしたね。テレビのインタビューのまんまという感じで。気さくだしリーダーシップもあって、率先してグラウンドの整備とかもやるんです。上から言うんじゃなくて、とにかく平等に接するというか」。難解なことで有名なチェコ語は「こんにちは」「ありがとう」といったあいさつくらいしか覚えられなかったという市毛にも、わかりやすい英語で話してくれた。

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 捕手が本職のムジークは、代表でもDHや一塁で出場することがあるように打力に優れた選手だ。やがて、市毛の登板時には弱冠17歳の捕手、ルカーシュ・イェリネクと組むことが増えていった。米国人の監督が、コーチのような役割を期待したのではないかという。そこでも常識の違いに遭遇する。

「全体に言えるんですが、捕手が(ストライクゾーンの端の)コースに構えないんですよ。アバウトに、ど真ん中に構えるんです。日本の感覚だとコースに投げ分けるのが大変で……」

 スマートフォンとグーグル翻訳を駆使して、意図を伝えていった。試合ではイニングが終わり、ベンチに戻るたびに話し合い。やがて捕手から質問が出るようになった。市毛の意図をくみ取り、要求すればボールがそこに来ることがわかると、しっかりコースを狙うように構えてくれるようになった。「やっぱり日本人は器用なんですかね。今のところチェコで抑えるには、制球力と順応力が重要だと思います」と、日本人の特性にも気づかされた。

 チェコ野球は日本との交流を深めようとしている。ムジークや代表のパベル・ハジム監督は8月にZOZOマリンスタジアムを訪れ、ロッテ戦で始球式を行った。9月には日本代表監督だった栗山英樹氏がチェコを訪れ、名誉親善大使に就任。今後、チェコのグラウンドには“日本流”が注入されていくのかもしれない。現状のチェコ野球の長所と課題を、市毛はこう分析する。

「パワーには素晴らしいものがあると思います。15歳の選手が、木製バットで本塁打を打ちますし、代表クラスの投手は150キロ近いボールを投げますから。ただ全体に、細かい野球をしているイメージはないですね。日本でそれなりの実績があれば、投手も野手も十分に戦えると思います」。国際舞台で成績を残し始めたチェコは、日本野球との化学変化でどう変わっていくだろうか。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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