札幌ドームを「負の遺産にしない」 ネガティブ報道に心痛、コンサドーレが示す二人三脚の姿勢
札幌ドームを「負の遺産」としないための試み
札幌ドームでは今年、大きな変化があった。北海道日本ハムファイターズが、自前のスタジアムである、北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDOへ移転。2004年から22年まで続いた、コンサドーレと日本ハムの共同使用は、ついに途切れることとなる。
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ドーム使用のコストは「前年とは変わりない」。それでも三上は、日本ハム移転後のネガティブな報道に、密かに心を痛めていたという。
「日ハムさんが出て行ったことで『札幌ドームの経営が厳しいのではないか?』という報道は、よく目にします。僕らができることは何かと言えば、ドームを『負の遺産』にしないこと。自前の専用スタジアムを作ることは、我々にとっても検討課題ではあります。けれども、このタイミングでそれを具体化してしまったら、ドームはどうなるのか? そんな思いはありました」
昨年11月、札幌ドームとコンサドーレは、2023年以降のドーム及び周辺地域の活性化に向けて、相互に連携・協力しながら事業に取り組むことを目的とした「スポーツのチカラ×まちのミライ」パートナーシップを締結。自前の専用スタジアムのプロジェクトは、いったん凍結している。クラブオフィスを札幌ドームに移転させたのも、パートナーシップの一環であろう。
札幌ドームの公式サイトによると、10月のサッカーや野球、ラグビーなどのスポーツイベントは11日あり、場面転換や休館日が8日。残り12日は空白である。エスコンフィールドに注目が集まる中、札幌ドームを「オワコン」化させないためには、試合がない日でも賑わいを作るためのノウハウが求められよう。
「おっしゃるとおり、我々のホームゲームの数も限られていますから、今は月の半分くらいはイベントがない状態です。試合がない日に、このエリアを使ってどれだけの人を集めることができるか。その部分のノウハウは、多少ですが我々は持っています。そういったものを無償で提供しながら、札幌ドームさんと一緒に、盛り上げていきたいと思っています」
三上への取材を終えてから、試合前のピッチに立つ。すでに前座イベントは終了し、札幌サポーターのチャントがドームに反響していた。今季の札幌は7位が最高、夏場に失速してからは2桁順位が続いている。それでもJ1をキープして、今季で7シーズン目。サポーターには言いたいことはあるだろうが、J2との昇降格を繰り返すエレベーター状態だった時代を思えば、今は幸福な日々を送っているとも言えよう。
そんな歴史を見守ってきた札幌ドームに、クラブはこれからも寄り添っていく姿勢を明確にした。その意味するところは、決して小さくないように感じる。思えば、サッカーとラグビーのワールドカップ、そして東京五輪の会場にもなったドーム施設というのは、世界的に見ても稀。当然、インバウンドにも資する存在であることは間違いない。
本稿の後編では、野々村社長時代からコンサドーレが重要視してきた、インバウンド戦略にフォーカスすることにしたい。(文中敬称略)
(宇都宮 徹壱 / Tetsuichi Utsunomiya)