王国・静岡復活は「サッカーだけでは届かない」 黄金期を知る澤登正朗、危機感の裏にある決意
上手いだけでなく「ずば抜けた選手を輩出したい」
澤登が日本代表に入った頃、チームにはカズこと三浦知良をはじめ、中山雅史、長谷川健太ら静岡県民が多く、チームに合流しても緊張することなく、スムーズに溶け込めた。それからも川口能活、名波浩、小野伸二、長谷部誠、内田篤人ら日本代表の顔となる選手を輩出してきた。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
だが、昨年のカタールW杯では神奈川県出身が遠藤航、伊東純也ら7名いた一方で、静岡県出身は伊藤洋輝だけだった。
「ちょっと寂しいですよね。これから先、日本を代表する選手が出てくる可能性はありますけど、僕の立場からすれば、そういう選手をどう作っていくのか、考えていかないといけない。個人的には上手いだけの選手ではなく、(MLBの)大谷翔平みたいなずば抜けた選手を輩出したいですね。
最近で言えばU-17アジアチャンピオンになった際、活躍したFWの名和田我空(神村学園)くんは上手いなと思いました。あと、道脇豊(ロアッソ熊本ユース)くんは、高さもあるし、いい選手だなという印象です。九州は素材としていい選手が多いですね。プレミアリーグWESTのチームは、攻撃重視でガンガン攻めてくる。そういう方向性が攻撃の選手が育ちやすいというか、攻撃力のある選手が生まれてくる要因の1つかもしれません」
選手にとってはハード面の環境も大事だが、プレー面での環境もその後の伸びしろを左右する。1990年代、2000年代の九州は、国見や鹿児島実業、東福岡などの強豪校に代表されるように、攻撃面で優れた選手を多く輩出してきた。その傾向は、今も継続している。
一方、静岡はどうだろうか。
以前は攻撃的な選手が多かったが、最近は中盤から後ろに選手が寄りつつある。澤登が指導するユースは、従来のボールを握ってという戦い方から縦に早い攻撃を意識している。
「うちは、後ろのセンターバックが1年生で、GKも高さがない1年生なので、引き込んでしまうとやられてしまう。前も高さがないので、フロントプレスをガンガンかけていき、奪い切ったところからショートカウンターという攻撃がメインです。理想だけでは勝てないので、今いる選手の特徴や個性を活かすと、そういうスタイルに落ち着きました。トップチームとは若干スタイルが違いますが、より技術を高め、フィジカルを伸ばしていく方向性は今も昔も変わらないです」
これから突出した選手を作るためには、ドリブルに特化した練習や指導を受けたり、ディフェンスも守備に強い人にそのやり方を教えてもらうなど、それぞれ何かに特化した時間を与え、個性をより打ち出していくことが必要だと澤登は考えている。