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W杯4強や8強の目標は「結局負けて終わるじゃないですか」 ラグビー稲垣啓太、笑わない男のシンプルな本質

9月8日に開幕したラグビー・ワールドカップのフランス大会。日本代表は「ONE TEAM」のフレーズとともに、列島に熱狂を巻き起こした2019年日本大会のベスト8を超える躍進が期待される。しかし、その中心選手として期待されるプロップの稲垣啓太は、あくまで「優勝」を目標として公言。その真意とは――。「笑わない男」と呼ばれる彼が「THE ANSWER」のインタビューに応じ、目標設定における独自の哲学、本大会にかける情熱を明かした。(取材・文=二宮 寿朗)

ラグビー日本代表の稲垣啓太【写真:近藤俊哉】
ラグビー日本代表の稲垣啓太【写真:近藤俊哉】

ラグビーW杯フランス大会が開幕

 9月8日に開幕したラグビー・ワールドカップのフランス大会。日本代表は「ONE TEAM」のフレーズとともに、列島に熱狂を巻き起こした2019年日本大会のベスト8を超える躍進が期待される。しかし、その中心選手として期待されるプロップの稲垣啓太は、あくまで「優勝」を目標として公言。その真意とは――。「笑わない男」と呼ばれる彼が「THE ANSWER」のインタビューに応じ、目標設定における独自の哲学、本大会にかける情熱を明かした。(取材・文=二宮 寿朗)

【前編】日本代表ラガーマンが明かす成長秘話 意識が変わった恩師との出会い / ラグビー 稲垣啓太選手インタビュー(GROWINGへ)

【後編】日本代表ラガーマンが「優勝」を公言する理由 目標達成の秘訣とは / ラグビー 稲垣啓太選手インタビュー(GROWINGへ)

 ◇ ◇ ◇

 稲垣啓太にとってワールドカップは、悔しい思い出しかない。

 過去7大会で1勝しか挙げていない日本代表があの南アフリカ代表を撃破した2015年も、そして1次リーグに全勝して日本ラグビー史上初めてベスト8に進出した2019年も。

 彼は言う。

「(日本開催の2019年大会で)1次リーグを突破したのは日本ラグビー史上初めてで、新しい一歩を踏み出せたことは素晴らしかったと思っています。ただ、負けて終わるっていうのはプレーヤーとして凄く悔しい。日本代表の一員としてワールドカップで結果を残すことが一番の名誉だし、それがすべてだと僕は思っています。それなのに負けて終わったわけですから、許せない事実。そのように自分に向けています」

「笑わない男」の本質は、「一喜一憂しない男」だと思えてならない。負けて終わっているのだから悔しい。実にシンプルだ。

 ゆえに彼がフランスで開催される今回のワールドカップにおいて優勝を目標として公言するのは当然なのかもしれない。

「ベスト8とかベスト4とか、そういった目標設定でも悪くはないと思うんです。でもそれって結局負けて終わってしまうことになるじゃないですか。僕としては負ける前提にはしたくない。上に登っていく過程で、頂上に挑むのであれば一番上を目指すのは当然だと思っていますし、ましてや前回ベスト8で終わっていますから。こうやって優勝と口に出すことによってプレッシャーとして自分にはね返ってくるのも理解しています。そういったことも自分の力にしていきたい」

 公言したことによって、のしかかってくるプレッシャーも理解している。しかしここに打ち勝てないようでは、大望を果たすことなどできない。彼はそう捉えているに違いない。

 かつ、南アフリカ代表を含めて1次リーグで3勝しながらも決勝トーナメントに進めなかった2015年大会、格上であるアイルランド代表やスコットランド代表を撃破して決勝トーナメントに進んだ2019年大会と段階を踏んできたことで、優勝を現実目標にセッティングできるようになったとも言える。

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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