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世界陸上でアスリートが認める米女性記者 敗れた100m王者も心を開く「メディア側の姿勢」

自身も元七種競技選手「どのように話しかけるかが全て」

 気さくに応じてくれたウィリアムズさんは、全米大学体育協会(NCAA)1部のテキサス工科大で、2018~20年まで七種競技の選手として活動していた。元アスリートだけに「どのように話しかけるかが全てだと思います」と取材される側の心情を知る。

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「私は選手が人として自然にいられるような話し方を心がけています。そして、決して選手が憂鬱になるようなことは言わないようにしています。優れたアスリートでも負けることはあります。その時に、『負けましたね』と聞くのではなく、何があったのか、どういう気持ちなのかを聞くようにしています」

 特に大事しているのは、質問に入る前の挨拶。「ある記者がいきなりマイクを選手の顔に文字通り突きつけて、『何があったんだ?』と聞いているのを見ました。そのやり方は違うと思います」。あくまで人と人との会話の中で、選手の本音を受け止めようとしている。

「相手がノーと言っているのに、しつこく追い回し、同じ質問を繰り返せば、信頼を得ることはできないと思います。もちろん、他の記者は別の仕事をしていて、求められるものが違うのはわかります。でも、もっと敬意を持った接し方ができるはずです」

 限られた取材時間。質問側の焦りもわかるし、時には聞きたくないことにも触れなければならない。負けたからといって、スルーされ、誰にも関心を持たれないのは選手からしても嬉しいことではないはずだ。

 そんな時も、ウィリアムズさんはリスペクトの姿勢を示す。信頼を得るために不可欠な要素。聞きたいことを優先するのではなく、選手が話したいこと、表現したいことを待つという。メディアとして伝えたいのは、アスリートの「リアル」な姿なのだろう。

 好成績を収めた選手と喜びを共有し、素直に気持ちを表現してもらう。カメラの前で踊ったり歌ったり。今大会、ウィリアムズさんの取材エリアでそんな様子が目立った。成功の背景にある努力を知るからこそ、溢れる感情の邪魔をしない。一方、失敗も、挫折もあるのが勝負の世界。そこに至るまでの日々には等しく価値がある。

「ファンのみんなにそれを見てもらう必要があると思います。メダルが全て、ハッピー、ハッピー、ハッピーだけじゃないってことを。手ぶらで帰っていくことになる選手もみんな、メダルを獲った選手たちと同じぐらい懸命に努力しています。だから、1年中ずっと練習してきたとしても、何も手に入らないことはあると知ってもらうのは重要だと思っています」

 超人的なトップアスリートも一人の人間。その味を伝えることで、人生にスポットライトを当てる。ウィリアムズさんのような聞き手がいるからこそ、ファンにスポーツを、アスリートのドラマを楽しんでもらえる。同じ取材者として襟を正す思いになった。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)

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