エルシオ「フィジカルの専門家が見た日本サッカー」第2回、指導者として見た日本代表選手の原点

　サッカー・Jリーグの発展を語る上でブラジル人の存在は欠かせない。1993年のリーグ開幕前から、ジーコら数々の名手が来日し、日本人選手に大きな影響を与えてきた。1989年にJSL（日本サッカーリーグ）時代の川崎製鉄に加入し、翌年からフィジカルコーチや監督としてチームを支えたエルシオ氏は、Jリーグでプレーすることはなかったが、プロ化以前から日本サッカーが成長する姿を見てきた1人だ。

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　これまで日本の13チームでコーチを務めるなど、指導者として異国の地で奮闘してきたが、そんな67歳の指導者の目に日本サッカーはどのように映っているのか。今回は1989年の初来日からJリーグの11クラブで指導してきたなかで、その後ワールドカップに出場するまでに成長した3人の日本代表選手の若き日を回想。彼らの原点を振り返るとともに、日本サッカーがさらに世界との差を詰め、追い越していくために必要なことを語った。（取材・文＝加部 究）

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　34年前に助っ人選手として初めて来日したエルシオは、以来主にフィジカルコーチとしてJリーグだけでも11クラブ（社会人チームを含めると合計13クラブ）で指導を続けてきた。

「日本は食事も美味しいし安全なので家族全員が気に入っている。他人を尊重する文化があり、正直な人が多いのも大好きなところだ。実は最初に来日した1989年は、長女と次女が7歳と6歳、長男はまだ1歳だったけれど、みんな15歳までは日本で勉強をして、それからブラジルに戻った。私はブラジルでの生活が長引くと、日本に戻りたくなるほどだよ」

　Jリーグが開幕してから30年間の日本サッカーの成長ぶりは、ほとんど現場で体感してきた。

「欧州へ行く選手が増えて、彼らが日本に戻って体験してきたことを伝えている。テクニックや戦術はもちろんだが、世界ではフィジカルの土台がないと決して戦えないことを強調してきた。その繰り返しが好循環を生んでいる」

　長いキャリアの中で、指導後にワールドカップに出場するまでに成長した3人の日本代表選手たちと接してきた。

「遠藤航は湘南ベルマーレに在籍した18歳の頃から成熟していて、24～25歳と同等の質を備え自信を持ってプレーしていた。反町（康治）監督も、キャプテンマークを託していたほどだよ。当時からリーダーシップも備えていて、あとは戦術、技術面に磨きをかけていくだけだったので、冗談で『日本代表も行けるだろ』と話していたのを覚えている。遠藤には、現在のような選手になる予感があった」