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日本の穴は「見えていた」 32点差の完敗、世界最強“NZ予備軍”が提示したラグビーW杯への宿題

対戦国が進める日本の重心の低いタックルへの対策

 タックル面では、他にもオールブラックスXVからの学びがあった。試合後のHO(フッカー)リッキー・リキテリの言葉がヒントになる。

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「日本のタックルは非常に強かった。ハードヒットをしてきたので、自分たちとしてもそれに乗っかるのではなくて、ボールを低く持っていくことを意識しました。かなり映像は見てきたので、ある程度予想通りではあったが、姿勢が高くなると日本のタックラーに入り込まれてしまうので、低くすることをイメージしました」

 日本の体を低くして懐に突き刺すようなタックル対策として、オールブラックスXV側もボールを持って当たりに行く時に、姿勢を低くして対応してきたのだ。日本のタックルを沈めた上体で封じ込んで、次の攻撃へよりスムーズな球出しをする。こんな接点での対策が、オールブラックスXVに日本以上にテンポのある攻撃をもたらした。

 2019年大会では対戦相手の脅威となったスピード感抜群の日本のアタックでも、“予備軍”からの教えがあった。

 日本の強みは、攻撃を重ねるなかで接点でいかに素早くボールを展開してテンポを上げていけるか。だが、この試合の多くのアタックシーンでは、日本が従来のテンポで球出しができていない。オールブラックスXVはコンタクト時にボールをコントロールさせないダブルタックルと、1人で真っ向勝負で相手をねじ伏せるドミネートタックルを、状況に応じて使い分け、日本選手にコンタクト後のボールコントロールをさせず、結果的に球出しを遅らせ、日本のテンポの速い攻撃を封じ込んだ。

 このような攻撃をスローダウンさせる接点での防御は、従来も日本対策の定番ではあった。だが、前回W杯で8強入りを遂げた日本に対して、今秋のフランス大会での対戦相手も、オールブラックスXVのように徹底してテンポを寸断しようとしてくるはずだ。対戦が決まっているイングランド、アルゼンチンが、この日のオールブラックスXVの防御を参考にしてくる可能性は十分にある。日本も新旧メンバーが混ざり合った布陣のため、コンビネーション、意思疎通の面で不十分さがあった試合だ。キーワードになる「完成度」を高めて、密集からより早いテンポでの球出しをすることで、生命線であるスピードを加速させるしかない。

 オールブラックスXVは、W杯本番でも強豪国が仕掛けてくる可能性がある戦術も見せていた。後半36分のラインアウトではSH(スクラムハーフ)をSOの位置に立たせることで、大外の選手(WTB)を余らそうと仕掛けてきた。直後の右オープン攻撃では、左WTBサリヴァンを右サイドに立たせて、スピードのある2人のWTBに同じサイドで攻めさせるプレーも披露。これらのポジションを微小にずらして攻撃ラインを充実させる工夫は、2か月後のフランスでも、多くのチームがチャレンジと工夫を利かせてくる。戦術、戦略に長けた日本代表も、防御対策と同時に、自分たちのスペシャルプレーの考案と磨き込みが求められる。

 第1戦で“世界最強の予備軍”が見せてくれた学びやヒントを、どこまで吸収、修正して、チームを進化させることができるか。熊本が舞台の第2ラウンド(7月15日)での、桜の戦士たちの仕上がりに注目したい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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