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東大入学より険しいプロサッカー選手の道 才能より大切な鍛錬と「自分の武器」を考え抜く力

水沼宏太がキック精度を磨き引き寄せた出会い

 日本でも、クロスはプロを生き抜く術の一つになり得る。

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「マリノスに(ユースから昇格で)入団した時、『自分の武器って何?』って自問した時、キックは好きだったし、ちょっとはできるかなって」

 昨年、32歳で初の日本代表に選ばれた水沼宏太が、そう振り返っていた。

「(自分のキャラは)ドリブルよりパスだったので、キックを武器にしようって、居残りでクロス練習するようになりました。最初は全然上手くいかず、ひたすら蹴っていた感じです。その後に栃木へ移籍し、試合に出てクロスを上げたけど、なかなか合わず。でも、鳥栖でトヨ君(豊田陽平)に出会って、クロスをものにできるストライカーに出会えたのが幸運でした」

 継続は力なり、だ。

「周りにもクロスが武器って見られるようになりましたね。今もクロスの練習は続けています。蹴り方によって回転をかけたり、かけなかったり、球種を増やせていますね。基本は反復練習ですが、クロスを警戒されてからは、いろいろと球種を覚えてきました。ストライカーによって入り方は全然違うんで、そこでチャレンジも生まれて」

 受け手に合わせることで、出し手の能力も自然と上がるという。豊田を筆頭に、杉本健勇、オナイウ阿道、前田大然など多くのストライカーを代表へ導いた。その結果、水沼自身も腕を上げ、名を上げた。

 サッカーはコミュニケーションが基本のスポーツだが、それを可能にするには個人や少数単位の鍛錬も欠かせない。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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