なぜ、水野晃樹はオシムに愛されたのか コーチを咎めた「分からずに叱るな」の言葉にあった答え
競争の激しいプロサッカーの世界で、20年以上にわたってキャリアを積み重ねられるのは限られた選手にのみ与えられる栄誉だ。今季からJ3のいわてグルージャ盛岡に所属する37歳の元日本代表MF水野晃樹も、2004年に高卒ルーキーとしてJリーグデビューを果たして以来、プロサッカー選手として20年目のシーズンを戦っている。だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。名将イビチャ・オシムからの寵愛を受けて飛躍するも、初の海外移籍で挫折を味わい、度重なる膝の怪我にも悩まされた。苦難を乗り越えながら駆け抜けた日々に、何を感じ、どんな答えを見つけてきたのか。
水野晃樹「名将に愛された男の20年」第3回、自信になった恩師がコーチに発した言葉
競争の激しいプロサッカーの世界で、20年以上にわたってキャリアを積み重ねられるのは限られた選手にのみ与えられる栄誉だ。今季からJ3のいわてグルージャ盛岡に所属する37歳の元日本代表MF水野晃樹も、2004年に高卒ルーキーとしてJリーグデビューを果たして以来、プロサッカー選手として20年目のシーズンを戦っている。だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。名将イビチャ・オシムからの寵愛を受けて飛躍するも、初の海外移籍で挫折を味わい、度重なる膝の怪我にも悩まされた。苦難を乗り越えながら駆け抜けた日々に、何を感じ、どんな答えを見つけてきたのか。
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今回はオシムとの師弟関係について、水野が「エレガントな選手」と呼ばれて愛された理由に迫った。(取材・文=小宮 良之)
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「オシムさんが、『日本人選手では水野晃樹が好きだった』という記事を見たことがあって。自分のことをそうやって評価してくれていたのは、他の人からも聞きます。なんでそんなに可愛がってもらえたのか……」
水野晃樹は、深い感謝と寂しさが入り混じった声で言った。2022年5月、イビチャ・オシムは惜しまれつつ、80歳の生涯を閉じた。2人だけの師弟関係があったはずだ。
なぜ、水野はオシムに愛されたのか?
2006年7月、ジェフユナイテッド千葉の選手たちとオシムは引き裂かれるように別れることになった。06年ドイツ・ワールドカップで惨敗した日本代表を救うために、代表監督就任が決定。急きょ、息子のアマル・オシムが後を継いだが、パワーダウンは否めず、終盤にはリーグ戦で5連敗を喫した。
「合宿中に突然、監督がいなくなった感じだったので、やはり混乱はありましたね」
水野は当時を振り返る。
「シーズン途中だったのもありましたけど、オシムさんが抜けた穴はあまりに大きくて。コーチだったアマルが監督になっても、ついていけないところがありました。オシムさんと同じ練習をやっても、違うことをやっている、という感覚でしたね。選手たちがどうしても比べちゃっていたんです。いなくなったオシムさんのほうへの矢印を向けたままで」
結果、チームは危機的状況に陥ったが、「オシムさんが見てくれている」という意識が選手を奮い立たせたという。その象徴がナビスコカップ決勝だった。
決勝戦では鹿島アントラーズを相手に、水野が右足で鮮やかに先制点を叩き込んでいる。2点目の阿部勇樹のゴールも、CKからアシスト。2-0という勝利の殊勲者となり、栄えある大会MVPに選ばれた。