悲願のリーグワン1部昇格の舞台裏 三重ホンダヒート、入替戦の重圧はね返した信頼と対応力
入替戦は「想定以上のことが起こってくる」
三重Hは今オフ、国内外から大型補強を敢行した。アルゼンチン代表元キャプテンのパブロ・マテーラ、オーストラリア代表のトム・バンクスという世界的ビッグネームを獲得。さらに日本代表史上最年少初キャップ記録を持ち、7人制ラグビー(セブンズ)日本代表として東京五輪に出場した藤田慶和を獲得した。
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昇格のためにチームに迎えられた新戦力の1人である藤田は、「この1週間、(順位決定戦から入替戦までの)3週間はプレッシャーがあったので、今は少しホッとしています」とその重圧を明かした。
「入替戦は何が起こるか分からないですし、いろいろなことを想定して挑んだのですが、それ以上のことが起こってくる。それをチーム全員でカバーして勝利できたことは、チームとしてもまた1つ、ステップアップできたと思います。
今シーズンは入替戦を目標にしていましたが、『1つひとつの試合を大切にして、成長していかないと入替戦での勝利はないよね』という話をずっとしていたので、そのマインドセットが最後に花開いたと感じています」
昨シーズンの悔しさを知る者、昇格の使命を担う者。それぞれが自分を信じ、仲間を信じ、昇格という目標のために準備してきたことを信じる。まさに、信は力なり、だ。
わずかな綻びが命取りになるサバイバルマッチで、想定以上のトラブルを乗り越えられたのは、自分たちのラグビーに対する信頼に加えて、選手個々に柔軟な「対応力」があったからだ。
指揮をとって2シーズン目となる、上田泰平ヘッドコーチ(HC)は言う。
「基本的に練習は15対15で、激しめの練習をシーズン初めからずっとやっていました。強度が高いので、同じ選手をずっとグラウンドに出せない。その結果として、選手は複数のポジションをこなすことになるので、全員がある程度ユーティリティ化している自信はありました。さらに選手同士でコミュニケーションを取って、ポジションを入れ替えたりしています。そうした練習の中で対応力が身につき、それが良い結果に結びつきました」