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高校閉鎖の危機、食い止めた方法は運動部休部 問われた「部活と学業」予算分配の問題

全運動部休止で問われた運動部活動と学業との予算分配の問題

 それでは、全運動部を休止させて、学校の存続を図ったプレモント独立学区の高校はその後、どうなったのだろうか。学区は助成金ほか、財団、企業、匿名の寄付者から寄付を受け、テキサスA&M大学から生徒、教師、管理者へのトレーニングと指導を受けた。大学から、指導戦略サポートを受けて、学校存続の条件である出席率と学力テストの点数がやや上向いてきた。

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 1年間、運動部休止と学力向上に関連があったのかどうかはわからないが、単位を取れない生徒が減ったという事実はあった。そこで、学区は、翌年にはバレーボールやクロスカントリー(長距離走)部の活動を再開させた。続いて、バスケットボール、野球、陸上が再開した。それでも、急激な向上は難しく、2015年までにはもう一度、閉校の危機があったという。しかし、さまざまな手法で財源を得て、危機を乗り越えると、2018年には6年間休部していた高校スポーツの花形種目であるアメフト部が復活した。新しいフィールドも作られた。

 テキサス州の小さな町の公立高校は、単に学校であるというほかに地域の人たちをつなぐ場所でもある。地元テレビ局のニュースが2018年にアメフト部の再開を伝えたとき、教育長は「地域社会と学区のディズニーストーリーです。住民たちは、子どもを他の学校に行かせることもできたが、この学区を失えば地域社会を失うことになることを知っていました。というのも、テキサス州の学区は、地域の中心だからです」と話した。地域社会の中心である学校閉鎖を食い止めた多くの人の踏ん張りは賞賛に値する。もしも、映画化されるならば、アメフト部の再開のシーンでハッピーエンドとなるだろう。

 前述したようにこの学区が全運動部休止を決めたとき、多くのメディアで取り上げられて、運動部活動と学業との予算分配の問題が問われた。そして、それに応えるために、運動部に参加することは、学力向上や退学率に効果があるというデータや、どのような参加形態が最も効果的かなどのデータが提出された。私は、プレモント独立学区のハッピーエンド以降は把握しきれていないが、身近な学校運動部を見回すと、こういったデータを活用してどのような活動形態にしていけばよいのかという話は後回しにされ、学校で運動部活動するためのお金をどうやって確保するかということに、関心が集まっているように感じる。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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