「大谷翔平は日本への愛情を示した」 WBCで世界の一流カメラマンが撮影した「侍ジャパンの絆」
プロのカメラマンは世界最高峰の舞台で何を意識し、何を見たのか。野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本代表「侍ジャパン」が3大会ぶり3度目の優勝。数々の名場面が生まれ、カメラマンは二度と戻らない瞬間を切り取った。
Getty Imagesのカメラマンが「THE ANSWER」のインタビューで振り返るWBC
プロのカメラマンは世界最高峰の舞台で何を意識し、何を見たのか。野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本代表「侍ジャパン」が3大会ぶり3度目の優勝。数々の名場面が生まれ、カメラマンは二度と戻らない瞬間を切り取った。
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「THE ANSWER」では、写真や動画などを取り扱う世界最大級のデジタルコンテンツカンパニー「Getty Images(ゲッティイメージズ)」のアレックス・トラウトウィッグ氏にメールインタビュー。プロ野球写真家協会(PBPA)の会長を務め、WBCを撮影した同氏に侍ジャパンや大谷の印象的なシーンについて聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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目に見えないはずの人の心をフィルムに焼きつけていた。「WBCで際立っていたのは、オオタニの感情や情熱です」。大会中、気持ちを爆発させながらプレーした大谷翔平投手。米大リーグ(MLB)でも何度も二刀流を撮影してきたトラウトウィッグ氏にとっても、野球を愛する姿は印象的だった。
準決勝のメキシコ戦。4-5の9回、先頭の大谷は右中間を破る二塁打を放ち、鬼の形相で両手を下から上に煽り、侍ベンチを鼓舞した。無死一、二塁で村上宗隆内野手が逆転サヨナラ打。大谷と一塁代走の周東佑京外野手が一気に生還した。「オオタニがベースを回り、日本が勝ち越しを決めた瞬間は、彼がゲーム、チームメート、そして自分の国に対して持っている純粋な喜びと愛情をファンに示していました」。熱は一流のカメラマンにも伝わっていた。
「MLBのシーズンは長く、WBCで選手たちが見せる興奮と情熱のレベルは、レギュラーシーズンでは数試合を除いて通常10月まで見ることができません。WBCがある年は、ワールドシリーズのような雰囲気でシーズンを始め、終えることができるので、幸運なことです」
大谷のことを「世代を超えた才能、まさに史上最高の選手の一人」と評する。被写体として特別な魅力があった。
「そのような選手を撮影していることに感謝せずにはいられません。今、私たちは幸運にもこのような選手を数人抱えていますが、彼らのそばで過ごす時間は、他の選手には存在しない重厚感があります」
Getty Imagesでスポーツオペレーション北米担当マネージャーを務める同氏。世界中の野球ファンが固唾を呑んで見守った大谷VSマイク・トラウト外野手の対戦は、大会屈指の名場面になった。「その瞬間のカメラマンの責任は、何が起こったのか、なぜそれが重要なのかを何とか伝えなければならないことです」。大舞台の撮影では何を意識しているのだろうか。
「WBCやワールドシリーズのような大きなイベントでは、その場から動くことができないので、その場でできる限りのことをする必要があります。スタジアムの雰囲気を出すためにレンズを変えることもあれば、1人の選手にフォーカスすることもあります」
限られた撮影スペースからでも、ストーリーを最大限に伝えるために努力する。時には興奮するファンに遮られたり、レンズ越しではどうしても見られないものがあったり。「運」も絡んでくるというが、「試合や起こりうるシナリオだけではなく、自分の周囲の環境にも非常に集中しなければいけません」と目に映る全てを収めようと全力を尽くす。
「理想的なスポーツ写真は、最高のアクション、美しい光、そして感情が融合したものです。エリートなアスリートたちの活躍や、時には失敗を伝えるようとすると、前面に出てくるのは競争心です。ある時は特定のプレーや人物、またある時は全体の結果やシーンなど、その日一番のストーリーを伝えることを常に目標としています」