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世界のサッカーで日本の“常識”は通用しない 海外挑戦する選手が磨くべき国際感覚

「条件次第で乗り換える」ことに悪気はない

 一方で、情誼が根っこにある口約束は(日本や韓国ではよくあることだが)、「男気」などと美談にもされがちだが、しばしば問題に発展する。事情次第でいつでも撤回できてしまい、あやふやだからだろう。

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「彼はクラブに残ると言ったのに裏切った」

 今年1月、Kリーグ・蔚山現代のホン・ミョンボ監督は、ライバルクラブである全北現代へ移籍した日本人MF天野純を口汚く罵っている。賛否は出たが、そもそも契約に従って移籍した選手を、監督が非難する権利など一切ない。問題は、然るべき手順で契約を更新しなかったクラブである。そこで「心情」を持ち込んでややこしくしているだけで、儒教的モラルが強く介在しているのだ。

 ブラジル人選手は、契約にない束縛など受け入れないだろう。彼らは自ら進んで「利を重んじて」行動する。単純明快。彼らはクラブに「残るよ」と伝えながら、条件次第で乗り換える。悪気はない。むしろ正義だ。

 日本人は、そこまでは割り切れないのだろうが、まずは自身のモラルに向き合ってから、世界と対峙していく時代だ。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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