軟式野球は「硬式のレベルが下がった版ではない」 宮城教育大35歳監督が情熱注ぐ理由
硬式野球とは似て非なる、奥深いスポーツ
中身が空洞になっている軟式球は飛びにくく、跳ねやすい。打球速度が遅い分、打者が打ってから野手が捕球し、送球するまでの時間は必然的に長くなる。その特性を逆手に取ったヒットエンドランや「叩き」(高いバウンドを打って三塁走者を生還させる戦術)といった作戦をタイミング良く成功させられるか否か、逆に守備面ではそれらを防ぐための的確な配球をできるかどうかが、勝敗の鍵を握る。
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またホームランを打つパワーがなくても、スイングの軌道を工夫することでボールを高く跳ねさせ、内野安打を稼ぐ選手などは軟式野球においては重宝される。硬式野球部出身だからといって簡単に順応できるわけではなく、経験が浅いからといって試合で活躍できないわけではない。硬式野球とは似て非なる、奥深いスポーツだ。
近年の東北地区ではこの「戦い方」を追求する風潮が強まり、「2強」状態だった以前と比べると実力が拮抗するようになってきた。宮城教育大は台頭してきた大学の1つ。中高で野球をしていなかった選手や女子選手など、多種多様な選手が在籍しているのがチームの特色だ。国立大で練習時間も限られているなか、畠山が統率を図り着実に力をつけてきた。昨秋のリーグ戦では強豪私立大を負かすほどの強さを見せつけ、群雄割拠の東北地区を制した。
プロ野球の世界にも中学で軟式野球部だった選手は多数おり、かつては高校軟式野球部出身の青木勇人投手(元西武など、現西武投手コーチ)ら、硬式野球の経験が少ないながらプロ入りする選手もいた。また近年は元プロ野球選手や強豪大学の硬式野球部出身者が社会人の軟式野球部でプレーするケースも増えている。草野球、生涯スポーツとしての軟式野球はもちろん、「本気の軟式野球」も野球界には存在し続けている。
「野球そのものの存在感が薄れている。競技人口も球場も、もっと増えてほしい。自分を成長させてくれた野球が日本の中で薄れていくのは嫌なので、自分の活動を通じて少しでも野球の存在価値を高められるのであれば、なんでもしたい」