高校サッカーの名門“市船”の重みとシゴキ 北嶋秀朗「すべて肯定するわけではなく…」
布監督には弱点を「見抜かれていた」
もっと、きついシゴキはいくらでもあった。しかし今になって振り返ってみると、良い思い出ばかりだという。
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「当時のことをすべて肯定するわけではなくて。ただ、これはよく言っているんですけど、グラウンドに落ちているキラキラしたものがたくさんあったんです。選手権という舞台もそうですし、日々きついなかでも隣にいつも仲間がいて、肩を組んで、(キラキラしたものを)拾って次へ行こうぜって。今の時代と比較するのは難しいですけど、あの時代はそうやって勝ちを拾っていて、それもサッカーの1つかなと思います。同じことをやろうとは思わないですけど(笑)」
その毎日が彼を育てたのだろう。そこには誰にも口を挟めない、宝物のような日々があった。
「(3年生になって)布(啓一郎)監督に『キャプテンマークを巻け』って言われて。『お前は将来、キャプテンマークを二度と巻くことないから、巻いとけ』って(笑)。たぶん、布さんは自分がメンタル弱いのを知っていて、責任感を持たせようとしたのかもしれません。2年生の選手権はPKで負けたんですけど、11番目でしたからね。キーパーより後で、どんだけメンタル弱いと思われているんだって(笑)。布さんのメッセージだったとしか思えない。自分は乗っちゃえば行く性格でしたけど、大事なところでダメなところもあって、それを見抜かれて責任を与えられたのかなって」
サッカー強豪校でのプレーは、期待と重圧を同時に背負う。選ばれた者たちだが、伝統を裏切ることは許されない。その重みに耐えられないなら、ユニフォームに袖を通す資格はないのだ。
「1年生の時、1回ユニフォームを忘れたことがあったんです。練習試合でしたが、めっちゃ怒られて。当然ですよね。その後、全体ミーティングで布さんが言ったんです。『お前たちが着ているユニフォームは、ただのユニフォームじゃない。どれだけの先輩たちが、その価値を高めるために頑張ってきたか。ユニフォームの価値を理解して行動してくれ。市船はお前たちの先輩たちが守ってきてくれたんだ』って。もうその通りだなって」