部活で足りない財源をどう補うべきか 民間企業のスポンサーが珍しくない米国の実例
理念や方法次第では過度な商業化にも地域還元事業にもなりうる
○ベルマーク型
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アメリカにもボックストップというベルマークと同じ仕組みの学校支援があるが、ここでは、日本でも導入されている「ウェブベルマーク」に似ているものを取り上げる。日本のウェブベルマークは、オンラインで買い物をすると、買い物額の一定の割合がベルマーク点数として加算される仕組みになっている。
アメリカにもこういった仕組みがある。買い物をすると指定した団体に、支払った金額の一部がキャッシュバックのような形で寄付される。オンラインだけでなく、リアルなスーパーマーケットでも同じである。メンバーカードのようなものを作り、会計時にこのカードを読み込み機器に通せば、買い物した額の一定の割合が事前に指定した団体に還元される。この還元先として、自分の子どもが通う学校やチームを登録しておく。
還元される割合は小さいが、チーム全員が日々の買い物で利用していれば、年間ではややまとまった額になることもある。これらも、競合店ではなく、決まった店で買い物するように誘導したり、買い物時の罪悪感を減らしたりするマーケティングであり、商業活動だ。それでも、筆者にとっては、日々の食料品・日用品を購入する必要があるので、必要な買い物時に一部が還元されるのは、ありがたいことだと感じる。
オンラインショップかリアル店舗かを問わず、こういった店が運動部やスポーツチームの運営に介入してくるというのは寡聞にして聞かない。
○販売代理型
これは、子どもや保護者が、特定の商品を支援者に購入してもらうと、メーカー等から一定の割合が運動部等のチームに入るというものだ。自分が購入するのではなく、他人に商品を買うように働きかけて、販売する方式なので、企業に代わって販売する販売代理型といえると思う。
例えば、鉢植えの花を販売すると、売り上げの50%がチームに入るというものや、クッキー生地を販売すると、最大で売り上げの55%がチームに入るというもの。大型商品でいえば、ベッドのマットレスを販売することもある。これらはたいてい数日間のファンドレイザー(財源調達)イベントを開催し、その期間に商品を買ってもらうことになる。このほかの民間企業関連のイベント型には、ゴルフ場やボウリング場と連携する方法がある。運動部が、割引価格でゴルフ場やボウリング場をレンタルし、お金を払ってゴルフやボウリングに参加してくれる支援者を募る。
また、ギフトカードを売ることもある。例をあげるとこのようなものだ。運動部やチームは、小売店やレストランから、20ドル(約2600円)分のギフトカードを18ドル(約2300円)で購入する。それを20ドルで他の人に買ってもらう。お店側はギフトカードの1割に相当する2ドル(約260円)をチームに寄付する。しかし、20ドルちょうどの買い物は難しいので、22ドル(約2850円)分を購入する人もいるだろうから、あまり損はしないといわれている。
ここでも、民間企業側は運動部やスポーツチームの運営に介入してくることはない。ただ、筆者は、他の人にものを売ることにはかなりの抵抗があった。民間企業のセールスの代理をやらされているようだとも感じた。また、近所の高校のアメリカンフットボール部の選手に頼まれて、必要でないものを買ったこともあり、すっきりしない気分だった。
アメリカの高校運動部は、日本の運動部よりも民間企業から支援を得ていることが多く、商業活動が入り込んでいるともいえる。ただ、一口に商業活動といえども、その理念や方法次第では、過度な商業主義化にも、運動部の理念を支える地域還元事業にもなりうると感じている。
(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)