W杯優勝アルゼンチンGKは「未熟だった」 日本在住の恩師が見抜いた16歳当時の才能
2023シーズンからJ1リーグに復帰する横浜FCに、日本との関わりも深い1人の外国人指導者が加わった。セットプレーコーチ兼アナリストに就任したのは、元アイルランド代表GKのジェリー・ペイトン氏。03年からイングランドの名門アーセナルで15年間にわたってGKコーチを務めたほか、3つのJクラブでの指導を経験し、21年からは兵庫県の相生学院高校サッカー部で監督として日本のユース年代の選手を教えてきた。
「元アーセナルGKコーチの選手育成論」第1回
2023シーズンからJ1リーグに復帰する横浜FCに、日本との関わりも深い1人の外国人指導者が加わった。セットプレーコーチ兼アナリストに就任したのは、元アイルランド代表GKのジェリー・ペイトン氏。03年からイングランドの名門アーセナルで15年間にわたってGKコーチを務めたほか、3つのJクラブでの指導を経験し、21年からは兵庫県の相生学院高校サッカー部で監督として日本のユース年代の選手を教えてきた。
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そんな世界トップレベルと日本のサッカー事情を知るペイトン氏の「選手育成論」に迫る短期連載。今回はカタール・ワールドカップ(W杯)でアルゼンチンの優勝に大きく貢献した守護神エミリアーノ・マルティネスが、若き日にアーセナルで見せていた才能の片鱗について振り返った。(取材・文=加部 究)
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カタールW杯でベストGKに贈られるゴールデングローブ賞を獲得したアルゼンチン代表のエミリアーノ・マルティネスの恩師が、実は日本に住んでいる。16歳でマルティネスの才能を見出し、今でも助言を送り続けているのは、かつてアイルランド代表としてW杯やEUROに参加し、アーセナルで15年間GKコーチを務めたジェリー・ペイトン。ここ2年間は兵庫県でプロ選手の育成を掲げた相生学院高校サッカー部で監督を続けてきた。
2009年、16歳のマルティネスは2日間だけ、アーセナルにやって来てトレーニングに参加。監督のアーセン・ベンゲルは、GKコーチとしてマルティネスに付き添ったペイトンに、こんな投げかけをした。
「ジェリー、今、世界一のGKは誰だと思う?」
ペイトンは答える。
「エトヴィン・ファン・デル・サールか、ジャンルイジ・ブッフォンだと思う」
「たぶん、世界中の誰に聞いても同じ答えが返ってくるだろうね。でもジェリー、君の仕事は誰も知らない選手をベストGKに育て上げることだよ」
その日からペイトンとマルティネスの壮大なチャレンジが始まった。長身だが痩せっぽちで技術も未熟だった青年が、世界の頂点まで上り詰めていく過程を、ペイトンが振り返った。
「南米担当のスペイン人から、非常に興味深いアルゼンチン人のGKがいると連絡を受けた。しかし私に与えられたのは2日間だけで、この短い時間で彼がトップレベルに到達できる選手なのかを判断しなければいけなかった。
私はトレーニングを通して、どれだけサッカーへの理解力があるか、いかに速く動けるか、パワーや瞬発力はどうか、などをチェック。アーセナルは彼と契約することになった」