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W杯でも活躍、世界的名手の原点にある共通点 並外れた“サッカー愛”が輝かせた才能

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、サッカー史にその名を刻む名手たちのルーツについて。それぞれが異なる家庭環境や育成環境の中から、FIFAワールドカップで活躍するような傑出したタレントに成長したが、そこには誰にも負けない「サッカーが好き」という共通する強い意志があった。

カタール・ワールドカップに出場しているC.ロナウドの並外れた負けん気は、少年時代に育まれた【写真:ロイター】
カタール・ワールドカップに出場しているC.ロナウドの並外れた負けん気は、少年時代に育まれた【写真:ロイター】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:育成環境より重要な選手自身の意志

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、サッカー史にその名を刻む名手たちのルーツについて。それぞれが異なる家庭環境や育成環境の中から、FIFAワールドカップで活躍するような傑出したタレントに成長したが、そこには誰にも負けない「サッカーが好き」という共通する強い意志があった。

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 筆者は、世界的な有力選手たちのルーツを辿ったことがある。クリスティアーノ・ロナウド、ルイス・フィーゴ、マヌエル・ルイ・コスタ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、フランチェスコ・トッティ、ジャンルイジ・ブッフォン、パオロ・マルディーニ、ラウール・ゴンサレス、ルート・ファン・ニステルローイなどがどのように育ったか。その原点を巡り、「ルーツ フットボーラーたちの原点」という一冊にまとめた。

 育成環境はそれぞれで、共通した点を探すのは難しかったが、一つだけあった。

「誰もがサッカーに夢中だった」

 サッカーが好きである熱量の巨大さだけは、一致していた。

 例えば、イタリアの伝説的ディフェンダーであるマルディーニは、サッカーに親しむ環境に恵まれていたと言える。父のチェーザレは元イタリア代表選手で、監督としても活躍し、あまつさえアンダー世代の監督として、息子を招集する立場だった。二世として優遇されていたようにも思える。

 ただ、そのアドバンテージは諸刃の剣でもあった。

 ことあるごとに、マルディーニは「親の七光り」と後ろ指を指された。それ故、本人は人一倍、努力を惜しまなかった。例えば夏のオフでビーチにバカンスしている間も、フィジカルトレーニングのメニューをこなすのだけは欠かさず、仲間たちからはからかわれていたという。それでも彼は「自分はサッカー選手としての人生を愛している」と意志を曲げなかった。

 どれだけ恵まれていようと、たとえ恵まれなかったとしても、与えられた環境で、どれだけサッカーに打ち込めるかで行くべき道は変わる。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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