42歳で「今、青春してます」 19年前に日本記録を出した陸上・末續慎吾が走り続ける理由
現役として臨む「それなりの場所」への挑戦「今、心が燃えている」
自身の世界観を自由に表現する場として2018年に立ち上げた「EAGLERUN」では、一人の競技者として走りを追究しながら、若手アスリートを指導したり、誰もが参加できるランコミュニティを提供したり、「走り続けること」と「アウトプットすること」が共存共栄している。両者が心地よいバランスを保つ中で今、競技者として新たな局面へ動き出しているという。
「現役選手を謳っているので、やるのであれば日本選手権だったりオリンピックだったり世界陸上だったり、それなりの場所でやろうと思っています。一応、自分を客観的には見ていて『ちょっとイカれているな』って思うところもありますけど(笑)。でも、それをやろうと思っているし、より強く思えてきている。
30代の時はやっぱり『大丈夫かな。年齢的なこともあるし』と思うけど、40歳を越えて振り切れた(笑)。走ってみてできているし、『できそうであればやろう。現役としてちゃんと結果を出していこう』という気持ちになってきている。一般的に考えれば『ちょっと大丈夫ですか?』となるけど、できると思える根拠と道筋、自分が表現したいものの準備が少しずつ進んでいるんですよ」
日本陸上界の歴史を変えた男が見据える、新たな可能性への挑戦。これまでの常識を覆そうという試みだからこそ、今、この瞬間が楽しくてたまらない。
「青春してますよ。また来たな、と思って(笑)。青春っていつだろうって考えた時、中学、高校、大学の記憶が引っ張り出される。でも多分、その時その時の青春ってあると思うんですよ。僕にとって40代の青春は今。友人たちと食事に行っても、高校や大学の頃の話は一切しません。その代わり、2週間前にやったことを永遠に話したり、これからやりたいことを話したり。今、心が燃えているんですよね。そうでもなければ、雨の中では走りません(笑)。今、青春してます」
40代の青春真っ只中。末續慎吾の今が見逃せない。
■末續 慎吾 / Shingo Suetsugu
1980年6月2日、熊本県生まれ。小学生の頃から運動が得意で、全国小学生陸上競技交流会に出場。中学でも好成績を残し、高等学校では国民体育大会の100メートル走で2度優勝を飾った。大学2年生だった2000年にシドニーオリンピックに出場。2003年の第9回世界陸上競技選手権大会は200メートルで3位となり、日本短距離界史上初のメダルを獲得。シドニーに続き、2004年のアテネ、2008年の北京と3大会連続でオリンピック出場を果たし、北京では4×100メートルリレーで第2走者として銀メダル獲得に貢献した。2015年からプロに転校し、現在も現役選手として走り続け、10月に行われた北九州陸上カーニバル2022では100メートルで10秒77を記録。自身が持つ40歳以上の日本記録を更新した。選手を続けながら「EAGLERUN(イーグルラン)」を主宰し、後進の指導やスポーツの普及にも努めている。日々の活動の様子は自身のInstagramで発信中。(https://www.instagram.com/suetsugu_shingo/)
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)