藤田さいき、涙ながらに感謝した夫の献身11年 包丁も持たせず、遂に果たしたV記念撮影
11年ぶりVで叶った夢「優勝したら2ショットを撮ってもらいたい」
互いに慣れていない海外遠征は辛いことが多かった。藤田は「ゆっくり湯船につかる」ことを喜びにしているが、宿泊先にはシャワーしかなく、初めてのリンクスコースには完全に打ちのめされた。初日は80、第2日は81で予選落ち。1度も80を切れなかったショックで、藤田は「もう、辞めたい」と引退まで口にしたが、和晃さんが「大丈夫」「また、頑張ろう」と励まし続け、再起に導いた。
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藤田自身も「もう1度勝つ」ために、すさまじい努力を続けてきた。12年からアプローチがイップス状態になり、パットにも苦しんだ。18年には12年連続で守ったシード権を喪失。なくしたフィーリングを取り戻すため、会場で顔見知りのプロコーチと立ち話をしながらヒントをもらい、上田桃子をはじめ、後輩選手にもアドバイスを求めた。
オフには坂道ダッシュ、手押し車など、ハードなトレーニングメニューをこなした。今年10月には、ドライバーをPINGの新製品G430、アイアンを同社のi230に変更。シーズン中のギア(道具)変更はリスクがあるが、さらなる飛び、キレを求め続けた。藤田は手応えを感じ、和晃さんも「ドライバーが曲がらなくなったことは大きいです。(今季中)勝てる可能性はあると思います」と話していた。
11年かかったが、今大会が藤田にとってのミセス初V。優勝賞金1800万円を上積みし、年間獲得賞金は7759万8586円となった。これは05年のプロデビュー以来のキャリアハイ。平均ストローク71.1996も自身最少の数値だ。文字通り、夫婦で掴んだ栄光だった。
この日も藤田と一緒に18ホールを歩いた和晃さんは、「おかげさまで、これで解禁です」と言った。これまでメディアに出ることはせず、名前も非公表だったが、ずっと「優勝したらカップを手にツーショットを撮ってもらいたい」と願っていた。夢は叶い、松山の空に、「いい夫婦」の笑顔が弾けた。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)