三笘薫を日本屈指のドリブラーにした筑波大の4年間 進化を加速させた2つの変化
ドリブルの質、技術以外に伸びたもの
筆者もこれについては同感で、小井土監督のコメントで言及されている部分は、川崎U-18時代から突出していたものだった。川崎の育成組織で長く指導し、現在は関東1部リーグ所属の南葛SCを率いる森一哉監督も、かつての三笘についてこう振り返っている。
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「薫は逆を取るのが昔から上手かったです。たぶん、何か人に見えないものが見えているんですよね。例えば、ちょっとした重心の移動が見えて『もうこっちには動けないな』と判断してそこに入っていく、みたいな。敵が次にどう動くかの身体の動きと、おそらく心も見えているのかもしれないですね。だから先が読めて、スルスルスルっといける」
では、なぜこの“特別な武器”が大学時代に光り輝くようになったのか。
要因はいくつかあるが、「フィジカル」と「思考力」の向上が彼の躍進に寄与したことは間違いない。
三笘のドリブルは大学1年時から十分に通用しており、入学初年度の2016年には主に途中出場でチームの攻撃にアクセントを加え、対峙した上級生を何度も手玉に取り、インカレ(全日本大学サッカー選手権大会)優勝の原動力となった。攻撃面にプラスアルファを求められる“ジョーカー”的な使われ方だったため、多少守備面やハードワークの面で目を瞑ってもらっていたきらいはある。
しかし、翌年以降は先発出場が増え、高校年代とは比にならない強度がある関東大学サッカーにおいて、90分間戦い続けるためのタフさをベースに、1試合を通じてスキルを発揮することが求められた。小井土監督もその点を求め続けたことで変化が生まれる。
「守備はできなかったのができるようになったっていうレベルですけど(笑)、伸びたところで言うとやっぱり、体のところですね。上手いけど90分持たなかったり、ちょっと当たられてしまったらへなって転んでしまったり。それが改善されたかなと思います」(小井土監督)