天才少女と呼ばれた金田久美子、33歳の復活V “もう一度、戦える体”を作った2人の存在
手足は細く見えるが、スイング中に筋肉は隆起
「失格が決まった後、私は泣いている彼女に『ごめんね。力になれなくて。これでゴルフを嫌になって、あきらめたりしないでね』と伝えました。それを本人もよく覚えていて、『あの時は、うれしかったです』と言ってくれました」
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再び縁が繋がったこともあり、天沼は名古屋市内に住む金田を「IMPACT A BODY NAGOYA」に招いた。元J1名古屋グランパスなどでプレーした飯島寿久さんが立ち上げたジムで、トレーナーの山田沙知子さんを紹介するに至った。山田さんは、00年シドニー五輪、04年アテネ五輪に出場した元競泳選手で、04年4月23日に800メートル自由形日本新記録(8分23秒68)を樹立。この記録は18年経っても破られておらず、山田さんは「記録保持者」でいる。
「山田トレーナーは、体のバランスが少しでもズレるとタイムが落ちる厳しい競泳の世界を生きた人。トレーニング知識も深く、妥協しない人ですが、何より明るい性格が金田プロに合うと思いました」
天沼の狙いは当たり、相性の良さを感じた金田は山田さんのもとで、トレーニングを重ねるようになった。「週1、2でいい」と言われていたが、「週4」で来るようになり、シーズン中も試合のない週は、そのペースを維持している。
腰痛を抱える金田の今季のテーマは、「ケガなくシーズンを終える」「軸を作る」の2つ。特に安定したスイングに不可欠な「体幹の強化」に力点を置いているという。
「山田さんのメニューは、重い器具を使わないものですが、かなりハードです。一般の方だと、すぐに『もう無理』というレベルです。金田プロも最初はできそうでできず、『なんで』と言っていましたが、ガッツがあるので、徐々にできるようになりました」
結果、金田は「強い体」を手にした。手足は細く見えるが、スイング中に筋肉が隆起し、ショットではハードなインパクトを実現している。
「優勝を決めた最終日でも、トレーニングの成果が見て取れました。『右に出るのでは』という体の動きの中、インパクト直前に体幹を使って、フェースを正しい位置に戻している場面もありました」
トレーナーとして貢献できたことを喜ぶ天沼だが、かつて自身も優勝争いを重ねた経験から、「6月のアース・モンダミンカップで1度、最終日最終組を経験したことも大きかった」と言った。この試合で金田は第3日を終えて、首位に2打差2位。8年ぶりの最終日最終組で、優勝した木村彩子に4打差の7位となった。
「私も何度も優勝を逃してきたので、よく分かります。月曜日から悔しさが増してくるんです。その分、『次のチャンスは逃さない』と思いますし、どうすれば最終日最終組で落ち着いていられるかを考えたことでしょう」