権田修一の好セーブは「3つの要素が重なった」 楢﨑正剛が見抜いた日本代表GKの技術
かつて自身も二足の草鞋を履いた楢崎氏から見た権田修一のGK像
目に見えないプレッシャーに晒されているのは容易に想像できるが、そのハードルを飛び越えるパフォーマンスを見せてこそ日の丸戦士にふさわしい。
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「日本代表の試合でつかんだ自信や余裕をクラブに持ち込んで高いパフォーマンスを見せる、という流れは実際にあると思います。重要なのは、自分が納得できているかどうか。所属クラブの成績を上げることはもちろん大切ですが、難しい状況でも自分自身に対する要求を上げていかなければいけないですし、それができなければ日本代表のGKとしてやっていけません。並の選手と同じプレーをしていても、周囲は納得しない。期待値が高いからこそ、要求されるレベルも必然的に上がっていきます」
かつて長きに渡り、日本代表のゴールマウスを守り続けた楢﨑氏の言葉には説得力がある。現役時代を回想し、経験談を交えながら所属クラブと日本代表の二足の草鞋について語った。
「所属していた名古屋グランパスが常に優勝争いしていたわけではなく、残留争いも経験しました。それでも苦しいチームを救って勝ち点をもたらし、違いを見せるようなプレーは常に求められていたと思います。だから権田選手がいなければ残留争いでもっと厳しい状況になっていたかもしれない、というくらいの存在感は必要でしょう。すべてを背負い過ぎる必要はありませんが、彼はとても責任感が強いタイプだと思います。もともとシュートストップに強みのある選手で、今の時代は求められることも増えていますが、それにもしっかりと応えられる技術面の高さもある。アベレージが高いGKなのは間違いありません」
日本代表の肩書きを持つがゆえに、時として厳しい声に晒されることもあるだろう。楢﨑氏はこの“宿命”とどのように向き合ってきたのか。
「パフォーマンスが良くなかったと自覚しているときはあまり情報を目に知れないようにして、良かったときはどれくらいの評価なのかを楽しみにしていました(笑)。自分に都合良く捉えることも時には必要ですし、あとは一緒に戦っているチームメイトに助けてもらうことも多かったです。もしミスがあったとしても、フォローしてもらうというよりもイジってもらうくらいのほうがいい(笑)。名古屋ではチームメイトが自分のミスなどを良い意味で茶化してきたりして、それで救われたこともあります。
良くも悪くも影響力が大きいのは明らかですが、日本代表だからパーフェクトというわけではなく、同じ人間です。それよりもミスの次にどうやってリカバーするか、立ち直るかといった部分で振る舞いを求められると思っていました。ワールドカップが目前に迫り、権田選手が現段階で出場に近いところにいるのは間違いないでしょう。それがより大きな力になるのか、あるいはプレッシャーになるのか、ナーバスになることもあって大変だと思うけど楽しんでほしいです」
偉大な先人としてエールを送った楢﨑氏。権田にとってJリーグの終盤戦はカタールでの夢舞台につながる道で、スポットライトを浴びる日々がしばらく続きそうだ。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)