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選手を傷つける誹謗中傷 「こんな競技、何が面白い」を喜べた羽根田卓也の発想の転換

羽根田が感じる、スポーツに対する欧州との意識の違いとは【写真:荒川祐史】
羽根田が感じる、スポーツに対する欧州との意識の違いとは【写真:荒川祐史】

メディアを通して感じる、スポーツに対する欧州との意識の違い

――一方、メディアの立場でいうと、今回のテーマでも容姿など、競技とは直接関係のない報道があると、『日本のメディアはレベルが低い』という声を聞きます。スロバキアで長く選手生活を送り、多くの海外メディアと接する機会のある羽根田選手の立場から、そうした現状をどう見ていますか?

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「レベルが低いというか、海外では日本よりメディアの中での“スポーツ”という仕切りがよりはっきりしているなと感じました。海外のスポーツニュースでは日本に比べて選手のプライベートやゴシップが少ない印象です。純粋なスポーツファンの数の割合も日本より多いように感じました。日本は欧州などよりエンターテインメントの部分にフォーカスが当たりやすく、そういったことから競技とは直接関係のない報道が増えるのかもしれません。ただ、日本ではプライベートなどそういった面を取り上げてもらうことによってスポーツへの関心を促したり、ファン獲得にも繋がっているという側面もあると思います。

 プロ野球などはエンターテインメントとして確立され、日本における社会的地位は凄いものがあるかと思いますが、一方で我々のようなアマチュアスポーツは必ずしもそうではない現実があります。海外ではカヌー競技のオリンピック選手で、自己紹介した時に『凄いね!』と反応してもらえますが、日本では冷たい反応をされることが何度もありました。プロスポーツとそうでないスポーツの構造は、海外も日本もあまり変わらないと思いますが、周りの人たちの捉え方に違いがあると感じました。でも、プロスポーツとしてなどの商業的価値は見出せてはいないかもしれないけど、社会にもっと寄与していけるスポーツの在り方を今たくさんの方々が考え取り組まれています。自分もその一人として頑張りたいと思います」

――日本では、昭和からテレビをつければ巨人戦があって、それが生活の一部に。大衆娯楽として、エンターテインメントの一つとしてプロ野球があり、その領域は抜け出していないのかもしれません。スポーツは何のためにあるのか、アスリートの価値は何なのか、という考えはなかなか深まりにくかった。

「五輪が終わったら誰も競技の話をしなくなる現状があり、あくまでも、スポーツはその時々の“イベント”という位置づけ。そうではなく自分の人生にどんな影響があるかという長いスパンでスポーツを見たり楽しむという風によりなっていってほしいです。さらにスポーツが身近になり、スポーツの本質的な価値に対しての理解が深まっていってほしいですね」

――おっしゃる通り、日本では五輪やサッカーW杯も定期的にやってくるイベントの一つで、ハロウィンになったら騒ぐし、五輪をやっていれば見るし……という選択しかされていないのかもしれません。

「ランニングひとつとっても、ダイエットのためばかりではなく、スポーツをすることが素晴らしいんだという意識がもっと広がればと思います。僕の友人に聞いてもスポーツで身体を動かすことは“苦しい”“きつい”“痛い”と返されることが少なくありません。スポーツって、気持ちいいものなんだ。それがメンタルヘルスに繋がるし、そもそも体を動かすことは条件なしに良いことなんだと。そのあたりは僕も長く暮らしていたスロバキアで教わった部分もあり、老若男女、何の疑いもなく当たり前に体を動かす文化がある。そうしたスポーツに対するポジティブな価値観がもっと広まってほしいですね」

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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羽根田 卓也

リオ五輪カヌー銅メダリスト THE ANSWER スペシャリスト

1987年7月17日生まれ。愛知・豊田市出身。ミキハウス所属。元カヌー選手だった父の影響で9歳から競技を始める。杜若高(愛知)3年で日本選手権優勝。卒業後にカヌーの強豪スロバキアに単身渡り、スロバキア国立コメニウス大卒業、コメニウス大学院修了。21歳で出場した2008年北京五輪は予選14位、2012年ロンドン五輪は7位入賞、2016年リオ五輪で日本人初の銅メダル獲得。以降、「ハネタク」の愛称で広く知られる存在に。東京五輪は10位。2022年1月、パリ五輪を目指し、現役続行することを表明した。175センチ、70キロ。

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