35歳メーカー営業職で日本代表 カヌーポロに懸けた競技人生、50万円超の遠征費は自腹
カヌーポロを知っていますか? 水上でカヌーに乗って5人対5人でボールをゴールに入れた得点を競うチームスポーツだ。オリンピックで実施されたことはない。アジア大会もない。国体や高校生のインターハイなど国内の総合大会でもやっていない。マイナーなカヌー競技のなかでも、さらにマイナーと言える。
カヌーポロ日本代表の柴田勝之、代表最年長として世界選手権へ出場
カヌーポロを知っていますか? 水上でカヌーに乗って5人対5人でボールをゴールに入れた得点を競うチームスポーツだ。オリンピックで実施されたことはない。アジア大会もない。国体や高校生のインターハイなど国内の総合大会でもやっていない。マイナーなカヌー競技のなかでも、さらにマイナーと言える。
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柴田勝之は高校生で日本代表となり、35歳となったこの夏も代表最年長として世界選手権へ出場する「ミスター・カヌーポロ」と言っていい経歴。失意のなかで出会ったスポーツの魅力に引き込まれ、技術の追求を楽しみ、1人でも多くの人に魅力を伝えたいと競技に打ち込んでいる。
「円安の影響がキツいですね。遠征費は50万円を超えそう」
世界選手権が開催されるフランスへの出発を前に、柴田は苦笑いした。すべて自腹。8人の男子代表たちは日本カヌー連盟を支援する企業のロゴが入った揃いのユニフォームを自費で購入して大会に参加するが、今回、連盟から遠征費用の補助はない。柴田は愛知県岡崎市の調理器具メーカー「服部工業」で営業職として働き、公休や年休を使って週末の練習、国内遠征、海外遠征を続けている。毎年の活動費は総額で150万円ほどという。感謝しているのは、それを応援し、許してくれる妻や3人の子どもたちに加え、職場の理解だ。
「長期の遠征に行けるのは、急な要件を同僚にカバーしてもらったり、取引先の方にも伝えて協力してもらったりしているから。本当にありがたい。自分も大会中に仕事のメールをチェックして、できるだけ迷惑をかけないようにしています」
日本選手権の出場は10チームほどで、「競技人口は100人に満たないのでは」。注目度が高いスポーツと違い、日本代表でも競技に集中できるほどの支援はない。
中学ではバレーボールに打ち込んだ。住んでいた長野県南部の高森町は天竜川が流れる「カヌーのまち」。スポーツに自信のあった柴田が、強く興味をひかれたのはテレビで日本代表の試合を観たバレーだった。入学時になかった男子バレー部を友人たちと作った。顧問が県内で知られた指導者だったこともあり、高い身体能力を生かして中2で長野県選抜入り。強豪の岡谷工高へ進む話もあったというが、親の転勤で中3の3学期に愛知県豊田市へ引っ越し、なくなった。