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35歳の今も第一線で活躍するJリーガーの秘密 槙野智章が年齢を重ねる裏で追求した走り

正しく走ることの意味を知った今は「新しい景色」を見せてくれる

 パフォーマンスの向上はチームの結果にも表れた。所属する浦和レッズは2015年と2016年にJ1リーグのステージタイトルを獲得。同時期にはJリーグYBCルヴァンカップや天皇杯、AFCチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げ、槙野自身はベストイレブンに選出されると同時に日本代表の常連としてプレーした。

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 35歳になった現在も第一線で活躍するトップアスリートだが、人間は年齢に抗えない部分もある。それは誰よりも本人が感じていることで「スプリントトレーニングに取り組み始めた頃に比べると落ちた部分はあるかもしれない」と潔く認められる懐の深さは槙野の大きな魅力だ。

 しかし、だからこそ正しく走ることには大きな意味がある。

「最初は、言われたことを理解できても体を動かせませんでした。何度も何度も自分が走っている映像を見返して、矯正していきました。このトレーニングはコンスタントに続けなければ意味がなくて、どうしても悪い癖が出てきてしまう。それがパフォーマンスの低下やケガにつながってしまうんです。ただ速く走ることを目指してスタートしたことが、今では新しい景色を見せてくれています。ここ数年はいろいろな選手が走りに注目するようになってきていると感じますが、僕は10年近く前から秋本さんに重要性を説いてもらっています。年齢を重ねても賢くプレーできるようになったのは、正しい走りを追求したからです」

 体に染みついた動作は、もちろん頭の中で整理されている。その成果がラン検定1級の一発合格だろう。

「これまでに受けてきた指導を復習する意味で、あらためて勉強になりました。たくさんの選手に興味を持ってもらいたいですし、子どもや指導者にとっても有意義なはず。最近、周りの選手の走りを見て、いろいろ分析してしまうんですよ。『この選手、もっと速く走れそう』とか、『ケガをしないか心配だな』とか。自分だけでなく走りに対する興味が湧いてきて、トレーニングメニューやそのタイミングも考えるようになりました」

 体力や筋力を維持するためにも、走りのトレーニングは重要度が増している。

 2022シーズンから秋本氏がいわきFC(J3)のスプリントコーチに就任したように、今後は各クラブが走りに特化したコーチを配する時代がやってくるかもしれない。すでにパーソナルトレーニングの枠組みにとどまらない勢いがある。

 老若男女問わず、生きていれば走る機会は自然と生まれる。勝負の世界の生きるアスリートはもちろんのこと、健康のためにもランは欠かせない。

 槙野が夢中になっている走りは、世の中を大きく変えていく力を持っている。

■槙野 智章 / Tomoaki Makino

 1987年5月11日生まれ、広島県出身。2000年に地元・広島のJリーグクラブ、サンフレッチェ広島の育成組織であるジュニアユースに加入し、ユースを経て、2006年にトップチームに昇格。翌年カナダで開催されたU-20ワールドユース(現U-20W杯)では激しいパフォーマンスなどで勝ち進むごとに注目を集め、“調子乗り世代”と呼ばれた。その後、2010年にドイツに渡りケルンで2シーズンプレー後に帰国し、浦和レッズに加入。2度のステージ優勝とAFCチャンピオンズリーグでアジア制覇を成し遂げた。日本代表としても活躍し、2018年のロシアW杯に出場している。今季からヴィッセル神戸に移籍している。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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