絶望的な大怪我から7年 「引退も覚悟した」今季、36歳バスケ選手が悲願のB1に初挑戦
2017年夏にチームへ合流、変えたプレースタイル
LEDコートに彩られたアルバルク東京と琉球ゴールデンキングスの開幕戦は、自宅のリビングでスマホで中継を見た。
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「ちょうど子供の見たい番組があった時間帯だったので譲って、後で見られるように録画はしました。あの試合を見てものすごくワクワクした。バスケットが変わった、ああいう環境で試合ができるのか、やりたい、と思った」
復帰へのモチベーションとなった。Bリーグ2シーズン目を迎える2017年の夏にチームへ合流し、シーズン後半の2018年2月から試合に出場できるようになった。
元々はドリブルで攻め込むプレーが多かったが、それができなくなったので外からのシュートをひたすら練習した。初めてフルシーズンをプレーした2018-19シーズン、3ポイントシュート成功率46.4%、フリースロー成功率90.5%はともにB2のトップ。プレースタイルを変えて、ただコートへ戻るだけでなく、成長も遂げた。
B1昇格を目指していたFE名古屋は、ずっと「ライセンス問題」を抱えていた。B1に必要な5000席以上のホームアリーナが計画も含めてなく、B1ライセンスが取れなかった。
「毎年、シーズン途中にライセンスの発表があるんですけど、成績も昇格の条件を満たしていなかったので、自分たちがまずは結果を出さないと、とモチベーションは逆に強くなっていた」
そして、初めてB1ライセンスを取得した昨シーズン、B1昇格とB2優勝をキャプテンとして達成した。「プレーオフは短期決戦なのでどうなるか分からないんですが、自分たちが1年通してやってきたことを表現できれば必ず結果が出ると、話し合っていた。昨シーズンは個の強い選手が集まって、あとはどれだけチームがまとまれるかがカギだった。苦しい場面や劣勢を個で解決しようとしちゃうと、上手くいかない傾向が強い。チームバスケットを開幕から意識してきて、最後に形になった」と振り返った。
家族にとっても待ち望んだ結果だ。
「僕よりも奥さんのほうが泣いていましたね。試合の映像を見直したら、ベンチの後ろで泣いているのが映っていました。怪我をした時、医者から僕より詳しく説明を受けていて、もう復帰できない、引退すると思っていたそうなので。続けてきて良かったねという話をしました。子供たちはまた今シーズンも試合を見に行けると喜んでいます」