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中津江村とカメルーン“遅刻騒動” 夜中3時到着も村民130人歓迎、日韓W杯から続く交流

鯛生スポーツセンター内の宿泊所に置かれた二段ベッド【写真:宇都宮徹壱】
鯛生スポーツセンター内の宿泊所に置かれた二段ベッド【写真:宇都宮徹壱】

カメルーンの到着が遅れるごとに増え続けたメディア

 ところが、待てど暮らせどカメルーンは到着しない。遅延の発端となったのは、シャルル・ド・ゴール空港で勃発した、協会と選手たちとの「ボーナス交渉」であった。ようやくパリを発ったのが、日本時間の22日早朝。しかし航続距離が短い旧型機だったため、途中で何度か給油地に着陸しなければならず、しかも数か国の領空通過を拒否されたため、日本到着はさらに後ろ倒しになってしまった。

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 関係者が不安を募らせるなか、この話題に激しく反応したのがメディアである。テレビ朝日の『ニュースステーション』がこの話題を取り上げ、さらに各テレビ局や新聞社が追随。「到着が遅れるごとに、メディアの数は膨れ上がっていきましたね。問い合わせの電話も鳴り止まなかったです」と津江。そして、こう続ける。

「福岡の空港に到着したのが、5日遅れの23日深夜だったのですが、カメルーン代表は24日、サガン鳥栖との練習試合を行う予定だったんです。さらに26日には、神戸でイングランド代表と親善試合。そうなると、中津江村には来てもらえないんじゃないかという話になって、ずいぶんと気を揉みましたね」

 幸い、それは杞憂だった。バス2台を連ねて、カメルーン代表が中津江村に到着したのは、明けて24日の午前3時。深夜にもかかわらず、村民130人と多くのメディア関係者が、待ちに待った「不屈のライオン」一行を出迎えることとなった。

「カメルーンのキャプテンだったリゴベル・ソングが、到着後の挨拶で『僕たちは今、家族になりました』って言ってくれたんです。中津江村の人たちにも、その思いがしっかり通じて、そこから両者の心の交流が始まりました。初めて目にするアフリカの人たちに対して、地元の人たちは笑顔でおもてなしをしていましたし、カメルーンの選手たちも子供たちとの交流会に積極的でした。ドイツ人のシェーファー監督だけは『そんな必要はない』って、不機嫌そうでしたけれど(苦笑)」

「不屈のライオン」を迎える準備は、万端整っていた。沿道に花を植えたり、フランス語の看板を作ったり、警備や世話係を進んで買って出る人もいた。津江いわく「村長の人柄のおかげですね。誰からも慕われる方でしたから」。そんな彼女自身、カメルーンの選手たちとの交流は、生涯忘れえぬものとなったという。

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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