[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「裸の会合」でトルシエ戦術を改良 宮本恒靖が証言、日韓W杯“初勝利”を導いた決断

守備陣で「多少の余裕を持って下がる」ことを確認

 宮本の問いかけに“フラットスリー”を組む松田直樹、中田浩二に加え、GKの楢﨑も加わって話し合いが進んだ。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「話をしていくと、『自分は、そうは思わない』ではなく、前々からみんな、そう思っていたことを確認できた。ギリギリで下げるんじゃなくて、多少の余裕を持って下がることで、よりセーフティに相手に対応できるというイメージを共有できた。だから次の日、フィールドで練習した時に、すぐに実現できた。フラットスリーのベースは変わらないけど、相手や状況に応じて変えていく戦術になった」

 宮本は、フラットスリーに特別な思いを抱いていた。

「トルシエの初陣になったエジプト戦を長居(スタジアム)に見に行ったんです。井原(正巳)さんが3枚の真ん中をやっていて試合のMVPになったんですけど、その時、フラットスリーは面白そうだなと思いました。その秋に五輪代表の合宿に呼ばれた時、A代表と同じ戦術でやると聞いてすごく楽しみだったし、実際にやってみると面白かった。トルシエも真ん中の候補として自分のことを『いいな』と評価してくれていたんで、やり甲斐もありました」

 練習ではフラットスリーの3人を含めて全体で相手がボールを上げれば、ラインを下げ、相手がボールを下げるとラインを上げる。その練習を毎回、繰り返し、呼吸を合わせて揃って動けるレベルにまで達した。また、攻撃ではFWからのプレッシングを徹底し、奪ってショートカウンターでゴールに迫った。そのスタイルは、今の森保一監督の日本代表の戦術にも似ている。

「今の代表のスタイルを見ると2002年から20年経過して、自分たちがやっていたものに近いところも見られます。サッカーの傾向は回帰するんだなと感じます」

 裸での本音トークで「フラットスリー」の改良に着手した宮本は、やり方の変更について、ボランチの稲本潤一と戸田和幸にも話をした。

「ボランチのコンビは、本当に頼もしかった。戸田はファイターで、相手にガッツリ行ってくれるし、イナは低い位置から前に出ていくという良さがベルギー戦に出た。それぞれの良さに加え、(ボランチの)頭の上をボールが越えていくと自陣に素早く戻ってきてくれたし、セカンドボールも拾ってくれた。それがすべて上手くいったのが、ロシア戦だったと思います」

1 2 3

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集